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導入事例

Lenovo Group Ltd.

SAP HANAを基盤としてサプライチェーン・システムを刷新し、圧倒的なパフォーマンスの改善とコスト削減を実現

導入について

レノボは、従来のグローバルサプライチェーンを刷新することを計画するとともに、北米地域でデータセンター製品を利用しているお客様に向けて自社所有の工場の体制を確立することを目指していました。今回のプロジェクトは、レノボの事業拡大に向けた基盤作りとなるものです。米国ノースカロライナ州、メキシコのモンテレイ、中国深センにあるレノボの工場の製造能力を強化するため、米国フルフィルメントセンター(USFC)とモンテレイ工場に、エンド・ツー・エンドのサプライチェーン・プラットフォーム を導入しました。

レノボが手がける製品は多岐にわたり、ビジネス上の要件やお客様のニーズは製品ごとに大きく異なります。
通常、サーバー、ス トレージ、ネットワーキングソリューションは、製造プロセスの中で特に厳しい要件が求められます。レノボがこれまで使用していた従来のVMI(仕入先管理在庫)システムは、古くて複雑なアーキテクチャをしており、多種多様な製品ラインナップを支えるために膨大なリソースを必要としていました。サプライチェーン全体の基盤となるシステムであるだけに、そのパフォーマンスは極めて重要です。
注文、製造、物流のプロセスを迅速に処理し、サーバーなどのデータセンター向け製品をお客様に届けるまでの時間をより一層短縮するため、このシステムのパフォーマンス向上が急務でした。 従来のシステムで新しいビジネスに対応するのは得策ではないとの判断から、レノボは、VMIとCFE(Cost Forecast Engine)のシステムを構築し直すことを決めました。

SAPがレノボのビジネスソリューションを構築

2014年9月、レノボは、IBM x86 事業継承に向け、SAPと新たにAPO(Advanced Planning & Optimization)システム、VMIシステム、 CFEシステムの構築支援に関する契約を締結しました。IBMの x86 事業継承を完了するためには、従来のIBMのサプライ・チェー ン・ネットワークをリプレースすることが重要な役割を果たします。

PC事業向けの従来のCFE/VMIシステム概要

x86 事業向けの新しいCFE/VMIシステム概要

VMIは、高度に自動化された実行システムで、レノボのサプライチェーンネットワークでは欠かせない存在です。今回導入したVMIシステムは、SAP SCM SNC(Supply Chain Management Supply Network Collaboration)モジュールに似ていますが、在庫ゼロへの対応や、3PLロジスティクスシステムとの連携など、レノボ独自の業務機能が数多く実装されました。
CFEは原価計算システムです。原価シミュレーション処理、実際の計算、分析と財務管理、ECCの部品購入に対する価格設定を担います。
今回の新しいVMI/CFEシステムは、中国SAPラボのCD(Custom Development)チームとSAP CI & SP(Customer Innovation & Strategic Projects)チームが全面的に担当しました。SAP HANAプラットフォームを基盤として一から構築した、エンド・ツー・エンドの包括的なシステムです。構築プロジェクトの範囲は、要件分析、再設計、開発と導入、レノボのIT部門への引き継ぎです。またCD チームは、システムの本稼働への導入をサポートしたほか、レノボが社内に立ち上げるHANAメンテナンス担当チームの結成も支援しました。

原価計算が11時間から8分に大幅削減

グローバル計画/購買担当部門: この部門では、原価予測の実行計画を完了し、各部品の価格を設定するのに、少なくとも1~2週間かかることが多々ありました。原価計算に要する時間が11時間を上回ることもあったからです。以前の業務形態では、この処理を日々欠かすことができませんでした。
しかし現在では、同じ作業がわずか6~8分で完了し、再計算もいつでも実行できます。サプライチェーン担当部門がグローバル 計画の会議を開いている最中に、コストの増加や経費要素の変化に応じて最終結果がどう変わるかを、その場ですぐに確認することも可能になりました。SAP HANAの強力な処理能力を生かした新しいCFEシステムによって、チームの仕事のあり方が一変し、 サプライチェーンネットワークの計画効率も向上しました。
一方、これまで、原価計画の代替案を一通り作成して比較検討するのに1週間かかることもありました。ある日の午前中に原価計画を1件作成したとしても、その計画がもたらす効果は、翌日にならないと確認できませんでした。
しかし現在では、代替案となる複数の原価予測計画のシミュレーションがすぐに完了します。すべての計算変更を午前中に実行し、午後の計画立案会議で複数の選択肢を確認できることから、作業を最大で4日短縮できるようになりました。

グローバルサプライチェーン/計画部門: 従来のVMIは、24時間365日体制で稼働する自動実行システムだったことから、常時待機の態勢や夜間の呼び出しに対応できる態勢を、計画サポートチーム全体で整えておく必要がありました。業務部門のエンドユーザーが使用するITサポートチケットの約50%は、実行プロセスの問題に関するものでした。例えば、プロセスの実行速度が遅い、実行がなかなか終わらない、ECCや3PLとVMIのコンポーネント間でデータが失われた、といった問題です。
その主な原因は、従来のシステムのVMIのアーキテクチャでデータ通信を処理する部分の構造にありました。Oracleデータベー ス、FTPサーバー、Javaプログラムが絡み合った複雑なアーキテクチャになっていたのです。 一方、新しいシステムでは、ECC/APO/3PLと、新しいVMIシステムとの間のデータ通信は、Data ServicesとODataサービスですべて処理しています。この結果、不必要な連携を排除し、以前よりはるかにシンプルでスマートなプロセスを実現できました。常時待機や呼び出し対応の態勢も必要ありません。

新システムで年間5,000万ドルのコスト削減

Beta Tauri※(深センのLSTC工場とメキシコのモンテレイ工場のCFEシステム、VMIシステム、APOシステムのフェーズ1とフェーズ2 を含む)は、レノボのビジネスの成長を後押しし、System x サーバー事業の継続的な統合を支えるプロジェクトです。これはメジャーリリースの第2回で、このほか数回のメジャーリリースを通じて、レノボは、IBMと締結したTSA(Transitional Services Agreement:移行期間のサービス提供契約)から脱却できます。Beta Tauriのリリースを含めて、移行作業は期日までに完了しました。システム統合の結果、レノボがTSAで支払う年間コストは5,000万米ドル削減されます。(Lenovo GroupのシニアバイスプレジデントでCIOのQingTong Zhou氏)

SAPは2015年に、2,000万ドルのライセンス契約をレノボと結びました。中国SAPにとって史上最大の契約です。この契約で最も重要な構成要素が、HANA Enterprise Editionです。VMIとCFEという2つのシステムが無事に本稼働を迎えたことは、レノボのHANA導入を加速するうえで大きな後押しになるはずです。この契約の価値を確実に立証できます。(SAP Chinaのグローバルア カウントディレクター、Jeffrey Liu氏)

従来のシステムで1週間以上かかっていた処理が、新しいCFEシステムでは、計画/購買担当部門のユーザーが、すべての作業を 1日で完了できるようになりました。この結果、意思決定がスピーディーになり、高い付加価値を持つ業務にウエートを置けるようになりました。 新しいVMIシステムでは、高度な自動化によって、すべてのプロセスの速度が上がり、よりインテリジェントになりました。 業務部門のユーザーも技術情報を把握しやすくなりました。プロセスやユーザーインタフェースが入念に練り上げられているため、ユーザー自身が問題をいち早く検知して、ITサポートチームに即座に知らせることができ、問題の迅速な解決につながります。

SAP HANAでVMIとCFEの連携を最適化

SAPを使っていなかった従来のシステムは、Oracleデータベース、WebLogic、JDA i2を基盤とし、データをやり取りする手段とし て、FTP、Java、Oracleデータベースを使っていました。そのため、システムの保守や問題の特定が厄介でした。新しいシステムでは、Data ServicesとODataサービスを使うことから、ファイル交換は一切不要になりました。また、従来のシステ ムでは、VMIやCFEとのデータ連携が多いという理由で、POとマスターデータのBOM情報はすべてOracleのPCDW(Planning Consolidation Data Warehouse)に一元的に格納していましたが、新しいシステムではSAP HANAにすべて移行しました。 こうして、新しいVMI/CFEシステムは、アーキテクチャ全体がシンプルになり、保守がしやすくなりました。

サプライチェーンの処理が3倍高速に

本プロジェクトのフェーズ1とフェーズ2(メキシコのモンテレイ工場と中国の深セン工場)で、業務部門のユーザーが2,000人以上います。 従来のCFEシステムでは何日もかかっていた処理が、新しいCFEシステムでは、わずか6~8分に短縮されました。新しいVMIシステムでは、サプライチェーンのプロセスが従来より3倍高速になりました。

BOM展開をインメモリで高速化

CFEは原価予測システムで、ERPシステムでの部品価格調整に使用します。その中心となるプロセスがFull Cost Calculationコンポーネントです。Oracleデータベースの頃は、この計算に11時間以上かかっていました。この計算では、すべてのBOMを上位レベ ルから下位レベルまで展開し、すべてのBOMデータを1つずつ仕上げていくことになります。Oracleデータベースでは、これを逐次処理で行っていました。BOMのマスター項目が10万件以上の場合、各BOMは5つのレベルで構成されています。従来のシステムでは、データベースのカーソルを使って、BOMの全項目をループしていたことから、膨大な時間がかかりました。
SAPの新しいソリューションでは、HANAの中で先進的な手法を採用しました。階層型の計算を使うことで、BOMテーブルから データを1件ずつ取り出すカーソルのほとんどを排除しています。また、BOMデータのレベル結合は、多数のメモリ変数で完了します。この手法によって、パフォーマンスに関する最大の問題が解決されました。SAPはこの手法に関して特許も申請しました。同じような要件を持つプロジェクトで効果を発揮します。

関連リンク

動画(英語):Lenovo new VMI & CFE system on SAP HANA XS
詳細情報(英語):Lenovo build new VMI and CFE system on SAP HANA(D31262)

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