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導入事例

新東京病院

医療ICT活用を広げつつ、より人に向きあうために、HCIを経営インパクト少なく実現した「Lenovo TruScale IaaS」

導入について


地域医療へのさらなる貢献を目指す新東京病院

新東京病院は、1968年4月に開設された東京外科内科病院から始まり、30余年にわたって急性心筋梗塞など心臓病の診療を中心に、千葉県北西部の東葛地域における救急医療を担ってきた。同院の理念として「患者の痛み(ACHES)は自分の痛み」を掲げている。患者や家族を中心に考える「思いやりのある医療」「高質で安全なチーム医療」の提供とそれによる社会貢献を使命としている。

和名ヶ谷に移転した2012年から、同院では脳卒中や癌に対するロボット支援手術などの高度専門的治療や手術機能の拡充を図ってきた。現在は、設備の拡大を並行して進めている。さらに重症患者の救急受け入れ機能、休日・夜間の救急受入れ機能の促進化によって地域医療へのさらなる貢献を目指している。

また、松戸駅前には通常外来の新東京クリニック、循環器系・糖尿病内科を担当する新東京ハートクリニックの2つの外来専門の施設がある。3拠点のネットワークは統合されていて、電子カルテや診療・検査結果などを共有している。

新東京病院のシステム課 課長補佐 臼井 貴志氏は「従業員のITヘルプデスク業務を中心に、院内の部門システムの導入・更新などにおけるベンダーとの交渉や方針決定などに従事しています」と語る。

以前、システム課では主に電子カルテとネットワーク管理業務が中心で、各部門が必要なシステムを導入から管理まで担当していたという。ただ、ICT活用が拡大するにつれて、セキュリティ対策の管理が難しくなってきた。セキュリティ対策を含めて、同院では6年前から院内システムを一元的に管理する体制を取っている。

同院のシステム課には5人が在籍しているが、約1,000人の職員が利用するシステム全般を少人数で管理することが求められた。臼井氏は「多くの医療機関では電子カルテ導入が当たり前となっています。また、検査や放射線治療などもデジタル化され、さまざまな医療システムが連動しています。システムの横展開が広がるにつれ、その一元管理が難しくなってしまいます。少ない人員でどう実現していくかが、より重要になってきました」と説明する。

部門システムのサーバー集約を契機に、システム基盤の刷新を検討

新東京病院では、院内と新東京クリニックの2拠点にサーバー室を構え、システムを運用していた。ただ、新東京クリニックでは老朽化した建物の地下室にサーバー室があったため、ゲリラ豪雨等による水没のリスクがあった。そこでハードウェアの更新タイミングで新東京病院のサーバー室にすべての部門システムの統合を検討することとなった。

ただ、「院内のサーバー室の空きスペースが限られていて、ラック増設や電源拡張など設備工事に多額の費用がかかることが問題でした」(臼井氏)。限られたスペースの中で、部門システムを集約できる仮想サーバーの導入を目指した。しかしそこにも課題は残った。

臼井氏は「仮想化で一時的に集約できても、物理サーバーに障害が発生したり、サーバーのメンテナンスや移行作業を実施する際に、どうしてもシステムを止めなければいけない可能性がありました。人命にもかかわる医療行為を支えるシステムの停止は、極力避けねばなりません」と当時を振り返る。

その課題を解決するため、新東京病院では、システム停止の可能性の残る従来の3層構成(3Tier)ではなく、コンピューティング、ストレージ、ネットワーク機能を統合して一元管理する「HCI(ハイパーコンヴァージド・インフラストラクチャ)」を対象に絞ってシステムの刷新を検討することとなった。

システム課のみなさまと安定運用を支えるLenovoサービス定例会の様子


IaaS「Lenovo TruScale IaaS」を採用して仮想環境を刷新

新東京病院では、複数社からのHCI提案を吟味した結果、レノボが提供する「Lenovo TruScale IaaS」(以下、TruScale)でのHCIソリューションを採用した。

TruScaleは、レノボ製品、提携他社のハードウェアをサービスとして利用できる「インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス(IaaS)」型ソリューションだ。

院内のサーバー室に必要なハードウェアを設置し、レノボの専任担当者である「カスタマー・サクセスマネージャー」がシステムの稼働状況をリモートでモニタリングし、プロアクティブな保守サポートサービスを提供する。

またTruScaleは、システム構成を柔軟にカスタマイズが可能だ。

さらに、TruScaleの料金形態は、固定月額はもちろん、実際の使用量に応じた「従量課金制」も可能となる。

新東京病院は、TruScaleを固定月額料金で利用して、レノボのHCI「ThinkAgile HX」シリーズの「HX5530-H」とNutanixソフトウェアを軸とするシステム基盤を導入した。

ThinkAgile HXは、3Tier型の仮想化基盤に比べてシンプルな構成を取る。また、Nutanixのソフトウェアによって仮想ストレージ化して容量追加・拡張作業が容易となり、ノードの拡張や切り離し、バージョンアップを無停止で実施可能だ。ハードウェアの運用管理を簡素化して、従来のシステム移行作業における各種準備・作業などの手間やコストを大幅に削減できる。

新東京病院は、2Uラック型で3.5型ドライブを12台搭載可能なHX5530-Hを3台、管理サーバー「ThinkSystem SR250V2」を導入した。


経営インパクトを最小化するTruScale

レノボの提案を採用した主な理由の1つとして、臼井氏は「経営へのインパクトを最小化できた」点を挙げる。

「医療機関では医業収益を生む診療や検査への投資が優先されます。そのため、システムやバックヤードへの投資に関してはシビアになり、なるべくコストを抑える傾向にあります。TruScaleであれば一括で多額の投資は必要なく、5年間の月額支払いが可能です。サポートサービス込みでいわばサブスクリプションのように利用できるため経営に対するインパクトを最小化できると考えました」(同氏)

臼井氏によると、以前にもHCI導入を検討してコストが見合わず断念したが、当時と比較して約4分の1の価格で導入できたという。また、他社の提案は、予算に抑えるために低スペック仕様であったのでパフォーマンス面でのリスクがあったと明かす。

その上で、臼井氏は「レノボの提案は、CPUやストレージに関しても十分な性能・容量でありながら、想定よりも安価な構成内容でした。投資コストを上回るようなシステム基盤の手配もしてもらいました」と評価する。

さらに、同氏は「病院のシステムではコスト制限のためにハードウェアやソフトウェアを調達した場合、長期間使用し、サーバーの寿命に合わせて更新します。延命措置にも限界があり、サーバーの停止リスクを常に意識しながら運用しています。HCIはハードウェアとソフトウェアの分離調達を可能にするので、病院のコスト削減に貢献します」と説明する。

加えて「HCIとNutanixを導入すると物理サーバーの更新やリソースの拡張時にもシステムを停止させずに済みます。さらに、サポートがあればソフトウェアも10年以上継続して利用できます。スモールスタートでシステム構築が可能になる点も魅力の1つです」(臼井氏)と HCIの優れた拡張性も評価する。

その他、臼井氏が採用の決め手の1つに挙げたのが「レノボのサポートによる安心感」だ。「従来、ハードウェアが故障した際、まずはSIベンダーに不具合を伝えて機器メーカーによる修理サポートを受ける必要がありました。ハードウェアの納入・設置から状態監視、保守サポートまでを一気通貫でレノボさんに任せられるので非常に安心です」(同氏)。

また、部門システムを提供するベンダーの中にはバックアップノウハウを持たないところも多く、部門システムごとに対策するとコストが膨大に膨らんでしまうこともある。一方、同基盤ではサーバー側からアクセスできない領域に読み取り専用でデータが保存されるため「コストパフォーマンスに最も優れたランサムウェア対策が可能になります」(臼井氏)

新東京病院が採用した、新しいシステム基盤イメージ


HCIは医療機関のニーズに合致するシステム基盤

新東京病院は2023年末にHCIを導入後、検体検査システムやリハビリ管理システムなどの部門システムを段階的に仮想サーバーに集約している。

臼井氏は稼働している10台の仮想サーバーの運用について、「Nutanixの管理サイトを確認するだけで済むので、サーバー室に出向いて状況を目視で確認する必要がなくなりました」と説明する。また、万が一物理サーバーが故障しても、システムの停止を避けられるため、いま現在実際にトラブルが起きていないが「実質的にほぼ何もしていない」(同氏)とのことだ。

現在は、院内システム全体の1割ほどではあるものの、既に導入効果を実感しているという。その一例として、臼井氏が挙げたのが「リハビリ管理システムの運用業務効率化」だ。

同氏によると、これまで物理サーバー上で稼働していたリハビリ管理システムでは、夜間にシステムを停止して定期的なバックアップや更新処理を実施する必要があった。

「まずシステムを22時に停止した上で、バックアップの取得に3時間ほどかかっていました。その後の更新処理を実施して再起動が完了するのは大体夜中の2時でした。現在の仮想環境ではバックアップ作業が45分程度で済み、更新処理を含めても1時間半程度で終了します。日をまたぐ夜間作業がなくなりました」(臼井氏)

また臼井氏は「仮想サーバー上では検体検査システムも集約していますが、救急患者が来た際にシステムが停止していると対応できなくなってしまいます。HCIは、緊急性の求められるシステムを止められない医療機関に向いていると思います」との見解を示す。


プロフェッショナル・サービスによる充実したサポートも評価

今回の刷新に当たっては、レノボのプロフェッショナル・サービス部隊がシステム構築や移行作業を支援した。

臼井氏は「導入前に抱えていた様々な不安に関して、事前に相談に乗ってもらえたことで非常に心強かったです。刷新プロジェクトをこちらの要望に合わせた形で進めてもらえました」と説明する。

また、2024年5月、同病院ではベンダーの入れ替えに伴うネットワーク環境の更新を実施した。その際、仮想サーバーとの通信トラブルに備えてレノボの担当者も立ち会ったとのことだ。「仮想サーバーではなくネットワークなどの他のインフラが変更した場合でも親身に対応してもらえました」と、レノボの充実したサポート体制を評価する。


仮想環境のさらなる拡大を視野に、信頼できるパートナーに今後も期待

今回のTruScaleの導入を踏まえ、新東京病院では、部門システムを仮想サーバーに順次移行していく予定だ。直近ではRIS(放射線科情報システム)の移行を控えるなど、サーバー台数ベースでは全体の約4割程度、システム件数としては7割程度まで仮想基盤で稼働させることを視野に入れている。

臼井氏は「TruScaleではより柔軟なシステム構築・運用が実現できます。これからもユーザーに寄り添った対応をお願いしたいです」と、今後のレノボの支援に期待を寄せている。

また、臼井氏は「AI問診や生成AIなどの先端技術が医療機関でも採用されつつあります。AI技術を活用することで、医師の働き方改革の実現や患者に向き合う時間が増えることも期待できます。私たちシステムを運用する側も同様に、人に向き合う時間を重視し、それぞれの要望をよく聞き、出来る方法を常に考えることが重要だと思っています。TruScaleやHCIによって、サーバー管理の業務に手間を掛けず、より人に向き合う時間が確保できるようになりました。引き続き、より多くのユーザーを支える時間を確保していきたいです」と説明する。

新東京病院におけるICT活用シーンは、今後も拡大していく。医療機関に求められる安定的なシステム稼働を通じた地域に貢献する医療の実現に向けて、レノボをはじめとするパートナー企業はこれからも欠かせない存在になることだろう。


(写真左から)

  • 誠馨会 新東京病院
    システム課
    佐々木 祐介 氏

  • 誠馨会 新東京病院
    システム課
    佐野 公章 氏

  • 誠馨会 新東京病院
    システム課 課長補佐
    臼井 貴志 氏

  • 誠馨会 新東京病院
    システム課
    吉田 有里 氏

  • 誠馨会 新東京病院
    システム課 副主任
    大木 泰司 氏

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