PCIソリューションズ株式会社
プラットフォーム事業部 営業マネージャー
河野 愛 氏
導入事例
PCIソリューションズ株式会社・株式会社パトライト
導入について
交通事故は、一般人や車両の通行中だけではなく、道路工事中の現場でも起こっている。もちろん工事現場でも事故への対策は取られているが、事故の発生数を減らすためにはITの力が必要だ。
この状況に待ったをかけるべく、トータルソリューションプロバイダーのPCIソリューションズ株式会社は、後方からの接近車両を検知して注意喚起する「後方接近車両検知システム」を開発。
また、緊急車両に搭載するサイレンや工場設備のシグナルタワーなどを開発するメーカーである株式会社パトライトと共同で社会課題の解決に挑戦している。その活躍を陰で支えているのが、レノボのエッジIoT端末「ThinkEdge SE30」だ。
写真左から)
株式会社パトライト 営業本部 社会ソリューション営業部 課長 樽見 孝一 氏、
レノボ・ジャパン合同会社 OEM事業部 Lenovo ThinkEdge ビジネス開発マネージャー Li Jill、
PCIソリューションズ株式会社 プラットフォーム事業部 営業マネージャー 河野 愛 氏、
PCIソリューションズ株式会社 プラットフォーム事業部4部 部長 山田 久 氏、
レノボ・ジャパン合同会社 OEM事業部 事業部長 川西 宏和、
レノボ・ジャパン合同会社 OEM事業部 インサイドアカウントマネージャー 吉川 勝敏
IoTソリューション事業を通して社会に貢献
PCIソリューションズ株式会社(以下、PCI)は「積極的(Positively)」「変化(Change)」「革新(Innovate)」をモットーに、ITソリューションを提供しているトータルソリューションプロバイダーだ。お客様目線に立って一緒に考えながら、AIやIoTなどの技術を使ったソリューションを提案する「課題解決型」のアプローチでお客様課題の解決を支援している。
また、身の回りにある電子機器や車載システムなどのさまざまな組み込みシステムを開発するエンベデッド事業、ビジネスや社会を支える業務系システムを開発するエンタープライズ事業、最先端の技術を取り入れたIoTソリューション事業、そしてセキュリティ製品の導入支援を行うプロダクトソリューション事業を展開している。
PCIでは、これまでの車載システム開発の経験を生かして2016年から「V2X(Vehicle to X)」や「BLE(Bluetooth Low Energy)」など車載関連の通信技術を活用した車車間通信などの研究開発に着手。その後、総務省主催の通信技術関連の研究会への参画、早稲田大学との共同研究を経た後、2018年よりIntelの「OpenVINO」をベースとするエッジAIの研究開発も進めて、IoTソリューションを提供している。
「当社は数多くの研究開発を通じてIoTのベースとなる通信技術・組み込み制御技術・アプリケーション開発技術に強みを持ちます。この強みを生かし、IoT分野においてもお客様のご要件にお応えできるようIoTソリューションへの着手を考えました」(河野氏)
株式会社パトライトは、緊急車両に搭載する回転灯や工場設備に設置する3色のシグナルタワーなどを開発するメーカー。パトライトは、世界中に「安心・安全・楽楽」を届けることを使命とし、社会環境作りに貢献している。
また、FA(ファクトリーオートメーション)や車両を中心とした、あらゆる業界の見える化をサポートし、生産効率の向上およびより安心・安全な交通社会の実現を目指している。さらに、自社だけでは解決困難な社会課題の解決に向けたパートナー企業の開拓も行う。
そんなパトライトでは、2010年よりIoTソリューションによるFA関連の見える化ソリューションの提供を開始。
生産設備に搭載される信号灯は、道路上の交通信号機と同様の役割を果たしており、点灯・消灯情報をタイムリーに収集・読み解くことで、工場の生産性向上に貢献する。
「装置の年代、メーカー等問わず、信号灯が唯一の共通部品であることにも着目し、点灯情報の活用で世界中の製造現場でも生産性向上が見込めると考え開発しました」(樽見氏)
両社の想いと技術が合致し「後方接近車両検知システム」を共同開発
高速道路の工事中に突然飛び込んできたクルマに巻き込まれて命を落とすという悲惨な事故が後を絶たない。そういった現状を取引会社から聞いたPCIは、自社の強みを生かして事故防止ソリューションを開発することを決意した。
「交通事故の対策はしているけれども、それでも飛び込まれ事故は後を絶たない。安全対策を補完する形のシステムができないかと取引先のお客様から相談がありました。そこで取引先のお客様の特殊車両に設置されているパトライト製サイレンアンプを生かしたソリューションができないかと考え、2021年にパトライトにお問い合わせすることになりました」(河野氏)
それに対し樽見氏は、「当社としてもちょうど、IoTによって新しいことが何かできないかと模索していた時でした。我々は光と音で視覚と聴覚に訴えかける機能を有する、いわゆるアウトプットする技術を担います。一方、PCIは我々の機器に適切で確実な情報をインプットする技術を担う立場です。その両社の力を合わせてソリューションを展開していけば、必ず社会のお役に立てると考えました」と言います。
PCIでは、ロードサービス業界向けソリューションとして、後方からの接近車両を検知して注意喚起する「後方接近車両検知システム」を開発。このシステムは、Intel OpenVINOをベースに開発されている。
「後方接近車両検知システムには車載対応のカメラを採用し、後方の道路の様子をくまなく撮影できるようにしました。その映像からAIモデルが常に車両を検知し、工事現場に接近してきそうな車両のみを捉えて警告する機器が動作する仕組みになっています。
この検知にはPCI独自開発のセル・照度変化検知技術を用いており、夜間にも強く、車両の光の動きから接近車両を判断することが可能です。セル・照度変化検知技術は、特許を取得しており、後方接近車両検知システムは、NETISの登録もしています。」(河野氏)
続けて樽見氏は「通行車両に電子標識で状況を伝える標識車に後方警戒AIカメラシステムを搭載することで、工事現場に急接近してくる車両等をシステムが自動で検知すると、標識車に搭載のサイレンと散光式警告灯が作動し、作業員に危険回避行動を促す仕組みです。
同時に作業環境下の騒音でも聞こえ易い周波数、且つ切迫感のあるサイレンを発する事で警告に気付いてもらえるようにしています」と話します。
「ThinkEdge SE30」の 過酷な環境下にも耐えうる堅牢性と省スペース性を評価
共同開発した後方接近車両検知システムには、エッジIoT端末「ThinkEdge SE30」が使用されている。その採用理由について河野氏は「レノボとコンタクトを取り始めたきっかけは、2021年10月に開催されたIntel主催のオンライン展示会です。
ちょうどその頃、AI画像処理システムを動かすためのエッジAIデバイスを検討していたため、レノボに相談して面談の場を設けました。その時は、まだ国内リリースしたばかりだったThinkEdge SE30を紹介いただき、デモ機で動作検証を実施しました。
その結果、他社製品との比較においてThinkEdge SE30が優れているという判断にいたりました。またレノボは、商社を介さずメーカー直、かつ国内でサポートを受けられることも大きな利点だと思っています。
導入当時は、ちょうど半導体不足が騒がれていましたが、レノボには社会課題の解決にかかわる案件の場合、在庫を優先的に確保する社内システムがあり、こちらの希望納期に対しても迅速に必要数量を納品いただき大変助かりました」と語る。
また、ThinkEdge SE30が持つ高い耐久性と堅牢性も採用のポイントになったという。
「屋外や車内など特殊な環境下での使用で問題が起こらないかどうか、また緊急車両にはさまざまな機器が載っていることもあり、狭い場所でも配置できるサイズ感も重視しました。動作温度の前提条件として-20℃~60℃の温度範囲に対応できることも必須でした。ファンレスで静かに動作することも大きなポイントになっています」(河野氏)
安心して暮らせるスマートシティの実現に向け三位一体で取り組む
今後もPCIでは、不慮の事故や事件に巻き込まれるリスクを軽減すべく、安全対策に貢献していくとのこと。
「今までの研究開発の成果を生かし、車両・人の動きを撮影した画像をThinkEdge SEシリーズでAI画像認識の処理を行い、処理結果を光や音でお知らせすることで、さまざまなソリューションを提供したいと考えています。既に展開しているソリューションとして、スマートシティの一環でもある、信号機の無い横断歩道でAI画像検知を利用した、車両と人との接触事故防止対策システムがあります。1件でも不慮の事故や事件に市民が巻き込まれることを防ぎたいとの思いです。
また、将来的にはグローバル展開を目指しており、今まで培った安心・安全のための技術を展開していきます。もちろん当社だけではなしえないため、パトライトやレノボとともに社会課題の解決を図っていきます」(河野氏)
一方のパトライトではスマートシティの推進などデジタル化がますます加速する市場に向け、見える化ソリューションの提供をし続けていくという。
「車社会の安心・安全については、見える化の部分も含めてまだまだ取り組まなければならないことが多くあります。潜在的課題を発掘するために、市場に対してわれわれから問いかけを行い、それで出てきた課題を解決する術を提供していきます。
そのためにも、今後もPCIやレノボと手を取り合って、開発を続けてまいります」(樽見氏)
株式会社パトライト
営業本部 社会ソリューション営業部 課長
樽見 孝一 氏
この課題を解決した製品・ソリューション
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ThinkEdge SE30
MIL-STD-810H規格もクリアし、超低温や高温の環境下での24時間365日稼働にも対応した5G/LTE対応 IoT端末。