北彩都病院
事務部 医療情報課
課長
三島 武政氏
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導入事例
電子カルテなどミッションクリティカルな医療システムを支えるLenovoのHCI
医療法人仁友会 北彩都病院(以下、北彩都病院)は、北海道旭川市を中心に長きに渡り地域の医療を支え続けてきた病院。急性期から慢性期の医療、介護・在宅に至るまで、医療・介護のトータルサービスを提供している。北海道最大規模の透析、泌尿器科・腎臓内科をはじめとする専門科を有した北彩都病院を基幹施設とし、そのほかにも10の医療・介護系施設を運営している。
法人全体の診療業務を支えるITシステムは約70台のサーバと約450台のクライアント端末で構成されており、あらゆる診療科で用いられる電子カルテシステムや、各診療部門ごとに利用される部門サーバなどさまざまなシステムを運用している。
これらサーバ群の大半は、マイクロソフトのサーバ仮想化技術「Hyper-V」を用いて構築した仮想化環境上で運用されており、かつては6台の物理サーバ上で約60台の仮想サーバが稼働していた。加えて電子カルテシステムのデータベースサーバに関しては、別途専用のサーバを設けてクラスタ構成を組んでいた。
上記のようなサーバ構成で長らく院内システムを運用してきた北彩都病院だったが、同院 事務部 医療情報課 課長 三島武政 氏によれば、その運用に当たっては幾つかの課題も抱えていたという。
「電子カルテのデータベースはミッションクリティカルなシステムだったので、専用のクラスタ構成を組んで可用性を高めていました。しかしその他の部門システムが載る仮想環境に関しては、トラブルやメンテナンス時に待機系へのフェイルオーバーを手作業で行っていたため業務システムをいちいち停止する必要があり、そのための作業工数もばかになりませんでした」
そんな折、それまで仮想サーバ基盤を支えてきた3台の物理サーバが保守期限を迎えることになり、新たな基盤を構築する必要性に迫られた。そこで次期仮想基盤は、高いレベルの冗長化や可用性を人手を掛けずに実現できることを必須要件とした。またそれまで専用の物理サーバ環境上で運用してきた電子カルテのデータベースも、今回の刷新とあわせて仮想環境上に載せて運用を一本化することにした。
同院がそれまで運用してきた仮想基盤のストレージ領域は、物理サーバが内蔵するローカルディスクを使って確保していた。今回のインフラ刷新に当たり、新たに共有ストレージ装置を導入する方法も考えられたが、アーキテクチャが大幅に変わることでシステム移行の難易度が上がったり、運用の工数が増えてしまうことも考えられたため見送られることとなった。
その代わりに同院が注目したのが、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)だった。
「HCIなら新たに共有ストレージ装置を導入することなく、複数のサーバの内蔵ディスクをソフトウェアで仮想化して1つに束ねることで、仮想的な共有ストレージを実現できます。そのため、これまで続けてきた物理サーバの運用形態を極力維持したまま、スムーズに移行できると考えました」(三島氏)
仮想基盤の構築・運用を依頼していた兼松エレクトロニクス(以下、KEL)にHCIの提案を依頼した結果、提案されたのが、LenovoのHCI製品「ThinkAgile MX」を使ったソリューションだった。ThinkAgile MXは、Lenovoの実績あるサーバプラットフォームと、HCI機能を備えたマイクロソフトのサーバOS「Windows Server 2019 Datacenter Edition」を組み合わせることでHCIを実現させたもの。両製品の組合せをあらかじめ徹底的に検証し、信頼性を保証した上で高いコストパフォーマンスを実現したソリューションとして、多くのユーザーから高く支持されている。
ThinkAgile MXの提案を受けた際の印象について、三島氏は次のように振り返る。
「他の提案と比較すると、構築費用も含めた全体のコストを約2割も抑えられることが分かりました。また重要視していた『冗長性・可用性』の機能も、私たちが掲げていた要件を十分クリアできることが分かりましたので、正式にThinkAgile MXを採用することに決めました」
早速、KELを交えてThinkAgile MXの導入検討作業を始めた。まずは今回インフラ刷新の対象となる仮想化基盤の現状のスペックや利用状況を精査し、その情報を基にKEL側でThinkAgile MXの台数やスペックを割り出した。こうしてシステム構成が決まった後、LenovoよりThinkAgile MX提供を受け、KELが北彩都病院の要件に合致するよう各種設定を施した上で設置作業を行った。
その後、旧環境からThinkAgile MXに仮想サーバを移行する作業は、北彩都病院の担当者が自ら行った。三島氏によれば、この作業は極めてスムーズに運んだという。
「もともと普段から、メンテナンス等のために仮想サーバを別のホストサーバに移行する作業は行っていました。今回のThinkAgile MXへの移行も、それまで行っていたのと同じHyper-V環境間での仮想サーバの移行でしたから、仮想サーバのVHDXファイルをコピーし仮想マシンを再設定するだけで簡単に行えました」
インフラ設計時に、将来の増加傾向も予想した上で十分なスペックとキャパシティを見ていたため、移行作業の間、ThinkAgile MXに起因するトラブルは一切発生しなかったという。
同院が重要視していた冗長化・可用性の要件についても、実際にThinkAgile MXのフェイルオーバー機能を試してみたところ、仮想マシン1台当たり1分以内で待機系に切り替えられることが分かり、十分に要件を満たせると判断した。なお、特に高い可用性が求められる電子カルテのデータベースについては、さらに仮想サーバ自体もクラスタ構成を組み、二重の冗長化を施すことでさらに可用性を高める工夫を凝らした。
仮想サーバの移行作業は2022年1月から始め、最終的には合計33台の仮想サーバをThinkAgile MXに移行した。そして最後に電子カルテのデータベース環境を2023年3月に移行し終え、当面必要な移行作業を大きなトラブルもなく無事終えることができた。その後もThinkAgile MXのHCI環境は特段大きなトラブルもなく稼働し続けており、三島氏はその安定性を高く評価する。
「非常に安定して稼働していますし、ハードウェアの監視機能が充実しているので日々の管理作業がとても楽になりました。また仮想サーバ環境の監視については、今回Windows Admin Centerを新たに導入しましたが、旧環境で使っていたSCVMM(System Center Virtual Machine Manager)と同様の使い勝手で利用できるため、運用の負担はまったく増えていません」
冗長化機能についても、幸いなことに現時点ではまだ障害に起因するフェイルオーバーが必要となる場面には遭遇していないものの、ホストサーバのWindows Server OSにWindows Updateを適用する際には、ThinkAgile MXのフェイルオーバー機能が大いに役立っているという。
「それまではホストサーバにWindows Updateを適用するたびに、すべての仮想サーバを30分から1時間ほど停止させる必要があり、利用部門への周知などに手間が掛かっていました。しかしThinkAgile MXへ移行後は仮想サーバを停止させることなく、待機系にフェイルオーバーさせた上でWindows Updateが適用できるようになり、とても楽になりました」
なお現時点では、まだ一部の部門システムは旧来の仮想基盤上で稼働しているが、今回のThinkAgile MXの導入効果を受け、同院では今後更新時期を迎える他の仮想サーバについても適宜ThinkAgile MXのHCI環境へ移行していきたいとしている。
「近く透析部門のシステムが更新時期を迎えますので、こちらの仮想サーバ3台をThinkAgile MXの環境で構築する計画を立てています。さらに2年後には、多数の仮想サーバが稼働している仮想基盤のハードウェアが保守期限を迎えますので、その移行先としてもThinkAgile MXの導入をぜひ前向きに検討したいと考えています」(三島氏)
北彩都病院
事務部 医療情報課
課長
三島 武政氏
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