安定的に長く稼働するシステムでは、段階的なアプローチは必要不可欠だと思っていました。
また、プロジェクト実施時は繁忙期ではなかったものの、土日でもシステムの停止をなるべく避けたいと考えていました。
こうした制約がある中、移行ステップを省略化できる提案によって、円滑に移行プロジェクトを遂行できたと思います。
島根銀行
業務管理グループ 藤原 司氏
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導入事例
レノボのThinkSystemシリーズとプロフェッショナルサービスを活用し、新仮想化基盤の構築と円滑なデータ移行を短期間で実現
島根県松江市に本店を置く第二地方銀行である島根銀行。「地域社会の発展に貢献し、信頼され、愛される銀行」となることを経営理念に掲げ、大正4年(1915)年5月の創業以来、「しまぎん」の愛称で山陰地域を中心に長年にわたり親しまれてきた。島根県に24、鳥取県に9店舗を構え、従業員数は337人を擁する(2022年3月末現在)。
同行は2019年9月にSBIグループと資本業務提携を締結し、多様で革新的な商品の提供や販路拡大・生産性向上を支援し、利便性の高いサービスを提供することで地域の成長に貢献してきた。また、2022年4月から2025年3月まで展開中の新中期経営計画では「夢への架け橋! Open Innovation Bank SHIMAGIN」をキャッチフレーズに、さらなる事業拡大を見据えた施策に取り組んでいる。
さらに2022年9月には「いつでもどこでも 手のひらに支店を」をコンセプトとする「スマートフォン支店(愛称「しまホ!」)」を新設。好金利の「しまぎんふるさと普通預金」やスマホATMサービスなどの充実した機能を提供し、2023年4月には預金残高が100億円を突破するなど注目を集めている。
現在は、デジタル・トランスフォーメーション(DX)と業務改革の実現と持続的に進化し続けるシステムとして「次世代バンキングシステム」への更改を進め、2025年中の稼働開始を予定するなど、積極的にデジタル化の実現に取り組んでいる。
2022年11月、島根銀行は情報系システムを中心とする仮想化基盤のリプレース時期を迎えていた。同行は、保守更新から2年経ったタイミングで同基盤を支えるハードウェアのリプレースを決断。それを契機にベンダーの切り替えを検討することになる。
島根銀行 業務管理グループ 藤原 司氏は「既存のシステム基盤を継続して使い続けるという選択肢もありましたが、ハードウェアの調達コストが膨れ上がることを避けたいと考えていました。また、人員やIT予算が限られる中で常に考えているコストを抑えた効率的なシステム運用を実現するため、ベンダーの切り替えに踏み切りました」と当時を振り返る。
安定稼働を重視する銀行システムでは、アプリケーションのバージョン管理には慎重を期すことが多い。そのため、トラブルが起こるまではアップデートしないという“塩漬けシステム”も多数存在する。
そうしたレガシーシステムの取り込みも課題として残っており、特に、既存の仮想環境で実現できなかった「Active Directory」の仮想化基盤への取り込みは、同行の最優先事項でもあったという。
島根銀行は、各社の提案内容を比較・検討して吟味した結果、これらの課題にもっともよく対応しているレノボの採用を決断した。その後、島根銀行はレノボと共に、新たな仮想環境基盤の構築とデータ移行プロジェクトを進めることになる。
島根銀行は2023年3月からプロジェクトを始動し、第一フェーズとして新仮想基盤の構築に着手した。具体的には、既存環境の調査から新環境設計に必要な項目の洗い出し、仮想化基盤用サーバー、ストレージ導入作業を進めた。また、開発・移行用仮想化環境やActive Directory移行環境、バックアップ環境も順次設計・構築していった。
新たな仮想化基盤用サーバーのハードウェアとして採用されたのが、レノボの「ThinkSystem SR630 V2」だ。ThinkSystem SR630は汎用性と高い信頼性を誇る1Uの2Pラック型サーバーで、様々なワークロードに対応できるように設計されている。また、島根銀行では、開発・移行用仮想化サーバーとActive Directory移行用サーバーとしてもThinkSystem SR630を導入した。
また、仮想化基盤のファイルサーバーとして、レノボのオールフラッシュ型ユニファイド・ストレージ製品「ThinkSystem DM5000F All Flash Array」が採用された。同製品は、データベースやVDI、仮想化などレイテンシーの影響を受けやすいワークロードに最適なストレージだ。さらに、バックアップ環境用NASとして「ThinkSystem DM3000H」を導入している。
システム規模にもよるが、オールフラッシュを含めたハードウェアとなると、一般的には導入コストが気になるポイントの1つだ。その点について、藤原氏は「移行用サーバーについては移行完了後に別用途で利用可能になるという提案を受けました。それは、自行で想定していた予算範囲内で抑えられることになり、レノボをパートナーに選定した理由の1つです」と説明する。
レノボが提案したソリューションは、単にハードウェアのリプレースだけにはとどまらなかった。島根銀行は、ハードウェア機器の刷新と併せてレノボが提供する「プロフェッショナルサービス」も採用した。プロフェッショナルサービスは、システムを構築する企業に対して、同社の豊富な実績を持っているコンサルタントやエンジニア、プロジェクトマネジャーなどがプロジェクトを支援するサービスだ。
島根銀行とレノボはハードウェアを刷新した新仮想化基盤の構築と並行してデータ移行計画を策定し、計画書に基づき新環境へのファイルサーバー、V2Vリハーサルを経て本番移行を成功させている。
同社の提案は、仮想化基盤および基盤上でソフトウェアのバージョンアップなどデータ移行の観点でも、島根銀行のニーズを満たすものだった。
藤原氏によると「ハードウェア刷新後、これまでよりも長く仮想化基盤を活用すること考えていました」という。ただ、仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」の環境バージョンアップにはネックとなる問題があった。
通常、vSphere5.5から6.7以上の環境にバージョンアップするためには、踏み台となるv6.5を用意した二段階のアップグレードが必要となる。そのため、環境準備に時間がかかり、工数増加などが大きな負荷になってしまう。
そうした二段階アップグレードを回避するため、レノボのプロフェッショナルサービス部隊は、現行環境の調査後に複数の移行方法の中から、バックアップ/レプリケーションソフトウェア「Veeam Backup & Replication」を活用するデータ移行方法を最適な解決策として提示した。
また、Active Directoryのアップグレードも最新の環境に移行するためには二段階でのアプローチが必要とされていた。レノボは、その解決策として最も影響が少ない移行方法を提示し、且つ既存環境では実現できなかったActive Directoryの仮想化基盤への集約も可能にしている。
それら提案を基に実施した移行プロジェクトでは、ストレージや仮想化環境のバージョンを意識せずに切り替えが可能となり、更改時の運用工数の短縮を実現できた。
藤原氏は「安定的に長く稼働するシステムでは、段階的なアプローチは必要不可欠だと思っていました。また、プロジェクト実施時は繁忙期ではなかったものの、土日でもシステムの停止をなるべく避けたいと考えていました。こうした制約がある中、移行ステップを省略化できる提案によって、円滑に移行プロジェクトを遂行できたと思います」と評価する。
さらに、移行時に利用したVeeamをそのままバックアップソフトとして継続活用できる提案も、同氏が考えていたコストを抑えた効率的なシステム運用の実現に大きく貢献したといえるだろう。
稼働後間もない新仮想化基盤だが、すでに刷新効果も現れ始めている。藤原氏は「システム運用担当者からは「仮想化基盤におけるV2V移行が楽になったという声が上がっています」と説明する。また、以前は処理が重かったアプリのレスポンスも「直感的にわかるほど速くなった」と藤原氏自身が感じることがあるという。
また、レノボのプロジェクト支援に関して「キックオフから始まり要件整理、方針決定、設計に至るまでの各種成果物、実際の移行支援など、豊富な実績に基づいて手厚く支援してもらいました。プロジェクトの進め方が非常に洗練されていると感じています」と評価する。
さらに「自行のプロジェクトメンバーのスキルでは解決が難しい部分がありました。その点について相談すると、すぐにサポートに駆けつけてくれたことが何度もあり、大変助けられました」と、プロフェッショナルサービスが果たした役割についても言及した。
「確実にステップを踏んでプロジェクトに並走してくれるサービスを提供してもらうことで、パートナーとして心強かったです。失敗できないプロジェクトを無事に成功することができたと思います」と、レノボに対する信頼できるパートナーとしての安心感を語ってくれた。
今後の展開について、藤原氏は「インボイス制度対応などが始まる中で、顧客の皆さんに対してより価値のあるサービスを提供するためには、今後DXが基盤となることは間違いありません。島根銀行として何ができるかを、情報収集やパートナー企業や他行との連携を通じて日々模索しています」と語る。
また、「実現したいアイデアはたくさんありますが、これからはセキュリティ対策も非常に重要であり、その上で業務の効率化を目指していきたいです。その実現は相当難しいと思っています」との見解を示す。現在も大規模なプロジェクトを推進しており、その不安や課題解決の伴走者としてレノボに寄せる期待も高まっているという。
島根銀行の取締役頭取である鈴木 良夫氏は、自行のWebサイトのトップメッセージにおいて、地域経済を支えるためにこれまで以上に顧客に寄り添う「Face to Face」に全力を傾けることを掲げていた。
島根銀行は2021年7月、国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」に賛同し、「しまぎんSDGs宣言(サステナビリティ宣言)」を公表。SDGsの達成に向け、経営理念の三本柱に基づいたデジタルシフトを推進し、顧客中心主義を基本とした「次世代型 Face to Face」の実践を目指している。既に、ビジネスマッチングを通じた取引先のCO2削減への取り組みが進行中だ。
同行は、これからも地域に根ざした銀行として、地域の経済を支える重要な使命を全うする取り組みを進めていくだろう。その実現を下支えする存在としてのレノボの活躍も期待したいところだ。
安定的に長く稼働するシステムでは、段階的なアプローチは必要不可欠だと思っていました。
また、プロジェクト実施時は繁忙期ではなかったものの、土日でもシステムの停止をなるべく避けたいと考えていました。
こうした制約がある中、移行ステップを省略化できる提案によって、円滑に移行プロジェクトを遂行できたと思います。
島根銀行
業務管理グループ 藤原 司氏
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