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導入事例

森羅株式会社

Azure Stack HCIを安価に導入できる「ThinkAgile MXシリーズ」

導入について

北海道の雪国で立ち上がったスマート農業プロジェクト

東京都板橋区にオフィスを構え、IoTプラットフォーム開発やITコンサルティング、各種システム開発・運用・保守など幅広い事業を手掛ける森羅株式会社。同社は現在、これまでさまざまなプロジェクトを通じて培ってきたノウハウを生かして、大変ユニークなIoTプロジェクトに取り組んでいる。それが、北海道美唄市が運営する「そらち工業団地」で進められている、「Snow Cloud Platform」と呼ばれる農業IoT実証試験プロジェクトだ。

同社代表の山端 克洋氏によれば、このプロジェクトのアイデアを思い立った背景には、現在美唄市がそらち工業団地で進めている「ホワイトデータセンター※3」というプロジェクトと、かつて同氏が開発に携わった「てるちゃん」という農業IoTソリューションの存在があったという。


「てるちゃんは、温度や湿度、照度などを測定できるIoTセンサーを圃場に設置し、もし異常値を検知したら生産者のスマートフォンやフィーチャーフォンに自動通知するというソリューションです。これを使うことで、農家の方々が圃場の状態を直接見て回るための負担を大幅に減らすことができます」

このてるちゃんの開発に携わったことから農業IoTに対する関心が高まっていた頃、ひょんなことから知り合いを通じてホワイトデータセンターのことを知った。ホワイトデータセンターは、冬季の降雪量が多い美唄市の気候を生かし、大量の雪を使ってデータセンター内部を冷却し、同時にサーバや機器類から出た排熱を使ってビニールハウスの内部を暖めて農作物の栽培や魚介類の養殖に生かそうという試み。


「ホワイトデータセンターのことを初めて知ったとき、これをてるちゃんと組み合わせれば低価格のスマート農業ソリューションが実現できるのではないかと閃きました。ITで農業を支援する『スマート農業』や『農業IoT』を謳ったソリューションは多いのですが、どれも価格が高くて、一般農家の方々や農業への新規参入を考える個人の方が手軽に手を出せるものではありません。でもこの組み合わせなら、極めて低価格のソリューションが実現できるのではないかと考えたのです」(山端氏)


Azure Stack HCIを実装したLenovoのサーバ製品を選定

ビニールハウス内に設置したセンサーデバイスで測定した温度や湿度、照度などのデータを、ホワイトデータセンター内に設置したサーバに送って一元管理し、もし異常値が検知された場合にはてるちゃんの仕組みを通じて生産者のスマートフォンに即座に通知する。

サーバ上に集めたデータは、専用プログラムによる解析に掛けることで、例えば作物の発育状況を把握して適切な措置を生産者に促したり、気候や害虫のリスクに素早く対応できるようにする。またビニールハウス内の環境変化を自動的に検知して、換気や水量調整といった処置をビニールハウス内に設置したデバイスに指示することで、手間の掛かる栽培作業を半自動化する。

「こうしたソリューション一式を『スターターキット』として低価格で販売することで、農業への新規参入者や、副業として農業にチャレンジしてみたいと考えている方々が、手軽に農業を始められるような環境を提供したいと考えています」(山端氏)

このスターターキットの提供価格を安価に抑えるためには、ホワイトデータセンター内に設置するシステムの構築費用もなるべく低く抑える必要がある。

そのため、システムを構成するサーバ製品の選定に当たっては「低価格であること」が第一条件だった。かつ、今後のシステム規模の拡張を考えると、スケーラビリティに優れるクラウドアーキテクチャをベースにシステムを構築したい。

これらの条件を満たすサーバプラットフォーム製品をさまざまな選択肢の中から取捨選択していった結果、最終的に同社が選んだのがLenovoの「ThinkAgile MX1021」だった。同製品は、高信頼のLenovoのサーバハードウェアと、マイクロソフトが提供するWindowsベースのHCIソリューション「Azure Stack HCI」を組み合わせたもの。同製品を選んだ理由について、山端氏は次のように述べる。

「AWSのクラウドアーキテクチャをオンプレミス環境に展開できるソリューションも検討したのですが、価格が高すぎて選択肢から外さざるを得ませんでした。

そこで低価格でクラウドライクなアーキテクチャを実現する手段としてAzure Stack HCIに着目し、さらにこれを実装するさまざまなサーバ製品の中でも特にコストパフォーマンスと信頼性に優れるLenovo製品を最終的に選びました」


オンプレミスとクラウドを併用するハイブリッドクラウドの運用に最適

ThinkAgile MX1021の導入作業は2021年末からスタートし、ホワイトデータセンター内に2ノードを設置した後、各種設定作業や検証作業を行った。また同時に、ホワイトデータセンターに隣接するそらち工業団地の区画に1000坪ほどの土地を確保し、ビニールハウスで農作物を栽培する環境も整えた。

このビニールハウス内にIoTセンサーデバイスや監視カメラを設置し、ここで計測した各種データをネットワーク経由でデータセンター内のThinkAgile MX1021に送る。これらのデータは「Azure Data Box Gateway」に保存しAzure側のBLOB Storageへ同期されます。

これらデータを使った各種処理や分析は、サーバレスプラットフォーム「Azure Functions」上に実装されたプログラムによって行われる。その処理結果は、ユーザーが利用するスマートフォンアプリ上で参照できるほか、将来的にはビニールハウス内に設置された空調装置や水量調整装置など各種デバイスをサーバから遠隔操作することで、作業の半自動化も目指す予定だ。

さらには、データセンター内ですべてを完結するのではなく、Microsoft Azureのパブリッククラウドのサービスも積極活用する「ハイブリッドクラウド」の形態を今後は目指していきたいと山端氏は話す。



「パブリッククラウド上のAzure Blob Storage上でデータのバックアップを取ったり、AIのクラウドサービスを使って画像分析などを行う予定です。またゆくゆくは、災害対策サイトもパブリッククラウド上に構築したいと考えています。

Azure Stack HCIの管理コンソールはMicrosoft Azureの管理ポータルとほぼ同じ使い勝手なので、今回のようにオンプレミスとクラウドが混在するハイブリッドクラウド環境の運用には極めて適していると感じました」


誰もが手軽に農業を手掛けられる未来を創っていく

Snow Cloud Platformプロジェクトは現時点ではまだ実証試験を始めるための準備段階だが、今後IoTデバイスの開発や設置、各種ソフトウェアの開発と実装を進めると同時に、農作物の栽培環境も順次整備していき、2022年秋から実証試験の第1フェイズを開始する予定となっている。

その後、数年間かけてさまざまな実証試験を行った上で、最終的にはその成果を前述の「スターターキット」として一般販売する予定だ。これによって現在人手不足や高齢化に悩む農家を支援するとともに、誰もが簡単に農業を始められる環境を実現していきたいと抱負を語る。

「まったくの未経験者が農業を始めるために必要なことを一からガイドするとともに、IoTデバイスを使いこなすためのコツや設定方法なども懇切丁寧にサポートすることで、『これさえ導入すれば誰でも農業を始められます!』と自信を持って謳えるようなソリューションを目指していきたいですね」


また、高齢化で離農する生産者がこれまでの農業経験の中で培ってきたノウハウを、スターターキットを通じて経験の浅い生産者に提供するサービスも考えているという。こうして熟練生産者のノウハウを可視化・継承する仕組みを提供することで農業への新規参入を促すとともに、離農する高齢者を経済面で支援することもできる。さらには、スターターキットを通じて生産した農作物を独自の販路で販売するルートもあわせて開拓することで、日本の農業を活性化するための独自のエコシステムを構築していきたいと山端氏は将来構想を語る。

「当面は北海道エリアの小規模な農家や新規参入者を対象にする予定ですが、中長期的には全国展開も視野に入れています。ThinkAgile MX1021はスケーラビリティや可用性に優れ、パブリッククラウドと連携させたハイブリッドクラウドの運用にも適していますから、こうした将来の事業拡張にもきっと柔軟に応えてくれると信じています」


出典
※1「てるちゃん」KDDI Web Communications https://www.tel-chan.com/
※2「BraveGATE」Braveridge https://www.braveridge.com/product/archives/7
※3「White Data Center」https://corp.wdc.co.jp/


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