「BIMとVRの連携によって、建築設計のあり方が進化し、よりカスタマーセントリックになり、より効率的になるはずです。レノボには、今後もLenovo Mirage Soloのような優れたプロダクトを提供し続けていただき、建築業界の変革を広範に支えてもらいたいと願っています」
京都女子大学
家政学部 生活造形学科
教授 工学博士(東京大学)
北尾靖雅氏
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導入事例
群馬県の「富岡製糸場」や日本各地に点在する「明治日本の産業革命遺産」など、日本には近代産業遺産が数多く存在しています。そうした産業遺産の保存・活用に向けて、デジタル測量技術やBIM(Building Information Modeling)、さらには、VR(Virtual Reality:仮想現実)技術を駆使した研究開発プロジェクトを推進しているのが、京都女子大学 家政学部 生活造形学科の北尾靖雅教授です。
「近代産業遺産は日本に4万5,000件存在するとされていますが、2019年には、文化財保護法が改正になり、それらの産業遺産についても文化財の一分類として保存と活用が求められるようになりました。つまり、建物のみならず、建物と共にある機械類や設備機器類などの動産も含めて、それらの歴史性を損なわずに保存し、かつ、安全性を担保しながら活用していくことが必要とされているわけです」(北尾教授)。
ただし、近代産業遺産の保存・活用は、簡単なプロジェクトではないといいます。
「例えば、歴史的建造物を文化遺産として登録するには、どう補修・修繕して、建物の安全性を担保するかを示す図面が必要です。その図面を作成するには、建物の状況を把握することが必須ですが、そのための調査には多くの費用と時間がかかるのが通常です。とりわけ、産業遺産のような巨大な建築物の場合、各所の寸法を測るためには、足場を組むだけでも多大なコストがかかります。ゆえに、“現状把握”という、保存・活用の計画づくりや活用企画につながる初めの一歩を踏み出しにくいのが現状だと認識しています」(北尾教授)。
こうした問題を解決する一手として、北尾教授が着想したのが、デジタル測量技術とBIMの活用です。具体的には、レーザーを使った3次元スキャナで建物をスキャンし、それによって収集した点群のデータをBIMに取り込んで3Dモデルや図面に展開しようと考えたのです。
3次元スキャナを活用することで建物が巨大であっても、足場などを組むことなく、少人数でクイックに建物全体をスキャンすることが可能になります。また、BIMを使うことで、3Dスキャンで得られた点群のデータを設計データに転換することが可能になるほか、建物のデータを部材単位で記録し、仮想空間上で建物を精緻に再現したり、構築したりすることが可能になります。
「BIMが優れているのは、建物に関するあらゆるデータを一元的に管理するデータベースとして機能できる点です。BIMを介することで、例えば、設備設計者や構造設計者、意匠設計者が建物空間を共有し、現状と改修後の評価を共同で行うことができるようになります。デジタル測量技術とBIMとのコンビネーションは、近代産業遺産の状況を把握し、改修と活用の可能性を最小限の費用と時間で検討・模索するための最適な設計手法となりうるというわけです」(北尾教授)。
今日では、地球環境への配慮などから、産業遺産のみならず、老朽化した既存建築物全般について、その有効活用(リノベーション/コンバージョン)がより強く求められるようになり、そのニーズを背景に建築士法も改正(2020年3月より施行)されています。「その観点からも、デジタル測量とBIMを使い、低コスト、かつスピーディに建物の状態を把握し、リノベーションにどの程度の工事が必要であり、コストがかかるかを割り出せるようになる意義は大きいと言えます」(北尾教授)。
上述したような着想を具体化させるべく、北尾教授は、日本建築士会連合会などの活動を通じて知り合った2社に協力を仰ぎました。1社は、岐阜県の設計事務所アーキ・キューブであり、もう1社は、測量ソフトの開発を手掛ける京都市の企業、シュルード設計です。
このうち、アーキ・キューブの代表取締役である大石佳知氏は、当時をこう振り返ります。
「当社は設計業務にBIMをいち早く取り入れ、今では、日常的にBIMで図面を書いています。ただし、既存の建物のリフォームを行うときにはBIMで扱える設計データがないのが通常で、簡易的な計測機械を使って建物を測量し、BIMに取り込んでいました。
そんなときに北尾先生と出会い、そこからリフォームで培ってきた当社のノウハウを産業遺産の保存・活用のプロジェクトに活かす取り組みが始まりました」
この言葉を受けたかたちで、シュルード設計 代表取締役の安逹基朗氏は次のように続けます。
「当社では、3Dスキャナ・アーム測定機を使った高精度な測定ソリューションを開発しています。北尾先生から、当社のデジタル測量技術を産業遺産の保存・活用に応用したいとの要請を受け、3Dスキャナで産業遺産を測定する技術を開発することにしたのです」
シュルード設計が開発した測定技術は、建物の“クイックスキャン”を実現する仕組みです。レーザーによる非接触調査を可能にし、手作業では数日から数カ月かかる建物の測量を数時間から数日で完了させられます。
そうしたクイックスキャン技術を活用し、北尾教授らはすでに、未公開建築物の内部空間を一般公開するための模型製作の実験に成功しています。クイックスキャンの対象にしたのは、重要文化財の「舞鶴旧鎮守府配水池」で、これは、旧軍港内の施設や艦艇に飲料水を供給していた施設です。
北尾教授らは、クイックスキャンによって同施設の点群データを取得し、そのデータを基にBIMで模型製作用データを構築。模型部品を3Dプリンターで出力して、精緻な模型を短期間のうちに作り上げたのです。
3Dプリンターによる模型作りを成功させたプロジェクトチームが次に取り組んだのは、模型ではなくVR画像によって、未公開建築物の内部空間を公開する試みです。また、北尾教授によれば、VRの活用には「VR設計」という新たな手法を確立するねらいもあったといいます。
「例えば、クイックスキャンで取得した点群データと、画像測量のデータを組み合わせ、位置情報と画像情報をVR空間上で合成して、合成したデータをBIMシステムに組み込みます。すると、建物内部の位置情報を含んだVR空間の中で、設計が行えるようになります。
これによって、設計者は、自身の設計した空間を利用者に体験させながら、フィードバックをもらい、設計内容を修正していくことが可能になります。これは、近代産業遺産の保存・活用のみならず、広く一般の建物の建築/リノベーションにも有効な設計方法となりえます」(北尾教授)。
こうしたVR設計システムの研究開発において、中心的なデバイスとして採用されているのがレノボのVRゴーグル「Lenovo Mirage Solo」です。北尾教授らが、同製品を採用した大きな理由は、使い勝手の良さと扱いやさです。
Lenovo Mirage Soloは、スタンドアロン(単独動作)で使えるVRゴーグルです。PCとの接続や外部センサーの設置などの必要がなく、ケーブルレスでVR空間が体験できます。また、空間内の動きを把握するGoogleのテクノロジー「WorldSense™」を搭載しており、利用者の動きを高精度で認識することができます。
「VR設計のアプローチで大切なのは、利用者に設計内容をストレスなく体験させることです。ですので、VR映像を再生するゴーグルは、顧客に対するプレゼンツールとして、いつでも、どこでも使えるようなデバイスであることが理想です。
その意味で、高性能でありながら、スタンドアロン/ワイヤレスでの動作が可能なLenovo Mirage Soloは、VR設計のコンセプトにフィットした製品と言えます」(大石氏)。
言うまでもなく、VR設計のシステムは、VRゴーグルだけで完結するものではなく、ほかにも、BIMソフトを稼働させるワークステーションや画像測量システム、点群調査システム、各種電子デバイスなどが必要とされます。ゆえに、VRゴーグルの選定と同様に、ワークステーションなどの機器も適切なスペックの製品を適切な価格で調達できることが重要になるといいます。
例えば、ワークステーションは、VRゴーグルと一緒に持ち運び、リノベーション対象の現場やプレゼンテーションの場で使う場合も想定されるため、レノボのモバイルワークステーション「ThinkPad P53」のように処理性能と携帯性に優れた製品が望ましいとしています。
そうした点を踏まえながら、北尾教授は話の最後を次のように締めくくります。
「BIMを使ったVR設計システムには、カスタマーセントリックの設計を効率化させるという点、つまりユーザーの必要性を空間的に把握しながら設計を行うユーザークライアントへと展開できる可能性を高く感じています。今後も、レノボの協力を適宜仰ぎながら、VR設計システムを洗練させ、さらなる可能性を探っていきたいと願っています」
「BIMとVRの連携によって、建築設計のあり方が進化し、よりカスタマーセントリックになり、より効率的になるはずです。レノボには、今後もLenovo Mirage Soloのような優れたプロダクトを提供し続けていただき、建築業界の変革を広範に支えてもらいたいと願っています」
京都女子大学
家政学部 生活造形学科
教授 工学博士(東京大学)
北尾靖雅氏
「北尾先生とのプロジェクトを通じて、BIMの本来的な価値と可能性について改めて認識できたと感じています。レノボには、テクノロジーの側面から今後も、BIMの普及を後押ししていただきたいと考えます」
アーキ・キューブ
代表取締役
大石佳知氏
「VRの利点を最大限に引き出すうえでは、VRゴーグルの使い勝手の良さがとても大切です。その点で、Lenovo Mirage Soloのユーザーインターフェースは非常に優れており、これならば、利用者の没入感を生みやすいと感じました」
シュルード設計
代表取締役
安達基朗氏
レノボのVRゴーグル「Lenovo Mirage Solo」を産業遺産の保存・活用に。
デジタル測量・BIM・VRを活用した次世代設計システムの実現へ。
PDF版はこちら(.pdf形式:2.08MB)
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