「内視鏡医の疲弊はとても深刻な問題で、その問題をAIで可能な限り早期に解決したいという我々の強い想いを下支えしてくれる存在として、レノボには期待しています。」
株式会社AIメディカルサービス
代表取締役CEO
多田 智裕氏
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導入事例
AIメディカルサービスは、現CEOで、内視鏡の専門医師(内視鏡医)として20年の経験を持つ多田 智裕氏が立ち上げた医療系ベンチャーです。ヒトの消化器(食道・胃~小腸・大腸)に対する「がん関連病変」の内視鏡検査において、内視鏡医の診断を支援するAI(人工知能)システムの実現を目指しています。大目標として掲げているのは、内視鏡画像のダブルチェックに忙殺されている医師の労務負担を大きく減らして、疲労による“がん見逃し”を撲滅することです。
「日本の内視鏡医が日々ダブルチェックしなければならない内視鏡画像は数千枚にも及びます。しかも、ダブルチェックは通常勤務外の時間を使って行わなければなりません。それはヒトの体力・集中力の限界を超えた労働と言え、そのことが“がんの見逃し”につながってきたのです」(多田氏)。
一方で、ディープラーニングの登場以降、AIによる画像認識の精度はみるみる高まり、2015年にはグーグルやマイクロソフトのAIが、ヒトよりも高い精度で画像を認識できるようになりました。
多田氏は、その事実を、AI研究の第一人者で東京大学大学院准教授の松尾 豊氏の講演で知り、即座に内視鏡診断へのAIの応用を想起したといいます。それは2016年11月のことです。
「画像認識の能力でAIのほうがヒトより上だとすれば、内視鏡画像のチェックにAIを使わない手はなく、そうすれば医師の労働負荷が劇的に減らせると考えました。これは、ごく当たり前の着想で、内視鏡診断へのAIの応用はすでに誰かが着手していると思っていました。
ところが、意外なことに、いくら調べても、そのような会社や組織はひとつもありません。ならば、自分で始めるしかないと考え、大学時代の知人に声をかけ、内視鏡診断を支援するAIの研究開発に着手したのです」(多田氏)。
多田氏らのAI研究開発は急ピッチで進み、世界初の「ピロリ菌人工知能診断論文」や「胃がん人工知能拾い上げ論文」 を相次ぎ発表、国内外の学会やマスコミで大きな話題となりました。一方で、胃がんの病変を、内視鏡の撮像からリアルタイムに検知するAIの実現にもメドが立ち、AIメディカルサービス創業へと至ったといいます。
AIメディカルサービスが商用化に向け開発を進めているシステムは、内視鏡検査の現場で医師の診断をサポートする仕組みです。上で触れたとおり、その最大の特徴は、医師が内視鏡でとらえた撮像をAIがリアルタイムに解析し、がん関連の病変を検知。医師にその場で伝えられる点にあります。
そのシステムを開発するに当たり、最も難度の高かった部分は、もちろんリアルタイムの解析・検知の実現です。
「医師による診断をリアルタイムに支援するためには、内視鏡映像を解析し、病変を検知すればいいわけではなく、その結果をすぐに表示させないと意味はありません。また、医師の動きに連動した解析も必要とされます。
そのすべての開発が完了しているわけではありませんが、少なくとも画像から0.02秒で病変を検知するという、世界でも例を見ない解析スピードを実現しています。あとは医師による使い勝手をどう高めるかの問題だと認識しています」
ちなみに、AIメディカルサービス創設前、多田氏はシステムのプロタイプを東京大学の松尾氏に見せて評価を仰ぎましたが、その性能の高さに松尾氏も、「このようなAIシステムはかつて見たことがない」と驚きを隠せなかったといいます。
AIメディカルサービスが開発を進めるシステムのもう一つの特徴は、コンパクトさにあります。AIを搭載したモバイルワークステーションがスタンドアロンで動作し、内視鏡からの映像をリアルタイムに解析して、医師の診断をサポートします。
「内視鏡の診察室には、デストップPCのような大型の機器が置けるスペースがないのが一般的です。ですから、システムには、狭い診察室でも簡単に設置ができて、置き場所を手軽に変えられるコンパクトさが必須でした」(多田氏)。
この“コンパクトさ”という要件を満たしつつ、内視鏡映像のリアルタイム解析という高負荷の処理を臨床での実用に耐えうる性能でこなす製品として、レノボのモバイルワークステーション「ThinkPad P72」が選ばれました。「複数社の製品を対象に比較検証を行いましたが、コンパクト性や処理性能に加えて、信頼性・静音性など、トータル性能で最も優れていたのがThinkPad P72でした」と、伊與田氏は振り返ります。
ThinkPad P72の採用を決めたAIメディカルサービスは同製品を約70台導入して研究開発用ソフトウェア(AI)を搭載させ、システムの共同開発を進める協力施設に配備しました。
「ThinkPad P72ベースのシステムは研究用途の仕組みで、診察には使われず、協力施設の内視鏡医にシステムを体験してもらうことと、ディープラーニング用の画像データを収集することが主な役割です。ただし、配置場所は臨床の現場ですから、故障をしたり、ファンの騒音がうるさかったりと、医師たちの作業の妨げになるような事象を発生させてはなりません。その点、ThinkPad P72は性能や騒音についてクレームは出ていませんし、大きな不具合も発生させていません」(伊與田氏)。
AIメディカルサービスでは今後、システムの使い勝手や病変検知の精度をさらに高めながら、厚生労働省による認可取得と商品化に向けた歩みを進めていくといいます。
「私たちが世界的にも有利なのは、内視鏡が日本で生まれ、発展を遂げてきた医療機器であることです。日本製品の世界シェアは70%に及び、内視鏡医のレベルも世界一です。世界最高レベルの内視鏡医がとらえた映像は、AIにとって世界最高の教材で、私たちはそれを使ってどんどん検知の精度を高めていけるのです」(伊與田氏)。
AIメディカルサービスは、世界の内視鏡学会で広く名の知れた存在です。その注目度はきわめて高く、2019年に米国で催された世界最大の内視鏡学会でも、世界最多12個の演題が採択され、論文を発表しています。
「私たちも当然、世界を見据えています。だからこそ、システムにグローバルブランドのレノボ製品を採用したと言えます。順番としては、日本での商用化を実現し、のちに世界へとなりますが、可能な限り早期にそれを実現して、世界中の内視鏡医の負担を減らしたい。
このシステムでダブルチェックが不要になれば、内視鏡医のドラスティックな働き方改革につながりますし、漏れのない、正確な診断が一度で行える可能性が高まります。
そうなれば、私たち全医師の願いである、患者さんの幸せにつながると確信しています」(多田氏)。
「内視鏡医の疲弊はとても深刻な問題で、その問題をAIで可能な限り早期に解決したいという我々の強い想いを下支えしてくれる存在として、レノボには期待しています。」
株式会社AIメディカルサービス
代表取締役CEO
多田 智裕氏
「ThinkPad P72は、処理性能はもとより、信頼性や堅牢性など、あらゆる点で当社がワークステーションに求めた要件を満たしていました。」
株式会社AIメディカルサービス
製品部門マネージャー
伊與田 正晃氏
圧倒的なパフォーマンスを誇る6コアCPU、第8世代インテル® Xeon® E モバイルプロセッサーの他、VR READY認定済みのNVIDIA® Quadro® P5200も搭載可能。デスクトップ機並みのハイスペック環境を実現モバイルワークステーション。