導入事例
プリンス電機株式会社
ブレードシステムから中小規模向けハイパーコンバージドへ
~わずか2週間での仮想化基盤構築、さらに設置スペースも削減~
- 業種 製造
- キーワード ハイパーコンバージド
- 製品カテゴリー サーバー
- 企業規模 中小企業のお客様(11〜999名)
導入について
食を彩る照明を半世紀以上にわたり追求
スーパーマーケットの食品売場を歩いていると、どれもが美味しそうで目移りし、買う予定のなかったものまで思わず買ってしまう──。読者諸氏の中にも、そんな経験をお持ちの方が少なからずおられるはずです。
もちろん、食に対する人の欲求を喚起する大元の力は、食品そのものにあります。ただし、小売店舗の多くでは、それに加えたプラスアルファの力を作用させています。それは、精肉や鮮魚、青果などの食品を、鮮度よく、より美しく、美味しく見せる光の演出です。
そんな演出を可能にする照明──つまりは、食品の魅力を最大限に引き出す照明を半世紀以上にわたって追求してきた施設用蛍光ランプ/照明器具のメーカーが、プリンス電機です。
同社は、スーパーマーケットやコンビニエンスストア(以下、コンビニ)、デパートなどに設置されている食品展示ショーケース/展示ケース用の蛍光ランプを主力に成長を続け、取引先は全国約1,000社に上っています。また近年は、蛍光ランプで培った卓越した演色技術をLED照明にも活かして商品ラインアップを拡大。スーパーマーケットやコンビニ、デパートなどの冷凍・冷蔵ショーケース等、展示ケースに最適化されたLED照明を提供し、着々と売上げを拡大させています。
「時代の要請に即応するかたちで、当社もLED照明の事業を始動させ、売上を増進させています。ただ、蛍光ランプが必要とされる場面も依然として多くあります。そのため、大手メーカーが蛍光ランプの事業から撤退する中でも、当社は、蛍光ランプをビジネスの柱の一つに位置づけ、製造・販売を続けています。結果、LED照明のみならず、高品質の蛍光ランプも製造できる希少な存在として、当社の価値がさらに高まっています」と、総務部 総務課長の北島理恵子氏は語ります。
さらに同氏は、同社の特色について、こうも続けます。
「当社は中小のメーカーですが、商品の設計・開発から製造、販売までを、一貫して社内で回しています。そのため、例えば、開発の人員も、自分が考案・開発した商品が、どのように製造・販売され、お客様にどう活用されているかを肌身でとらえ、改善・改革の一手を迅速に打つことも可能です。それは大手メーカーでは味わえない醍醐味で、それが良質な製品づくりにつながっていると考えています」
東日本大震災を機にITインフラのフルアウトソースを決断
こうした同社の事業運営を支えるITシステムは、基幹業務系と情報系の2つに大別できます。このうち、基幹業務系に類するのは販売管理と生産管理のシステムで、その基盤としては「IBM System i(旧AS/400)」が長く用いられています。一方、情報系に類するシステムは、本社と工場、営業拠点、そして全国を駆け巡る営業担当者を相互に結ぶグループウェアやメール、ファイルサーバーなどで、そのほか、会計システムなども情報系のインフラの上で運用されています。
かつて、これらのシステムのインフラ(サーバー群)は本社内に配備され、運用されてきました。しかし、2011年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、そうした運用スタイルに限界を感じたと北島氏は振り返ります。
「万が一、先の震災と同規模の災害に見舞われ、本社が深刻なダメージを受けた場合、自力ではとてもシステムの稼働を継続させることができず、大切なデータも守れないと強く感じました。また当時、社内のIT担当者は一人だけで、その人がいないとシステム上のトラブルに一切対応できない状況にありました。それも大きなリスクと判断しました」
こうした考えから、同社では、古くから付き合いのあったシステムインテグレーター、JBCCに委託し、データセンターにインフラを移管、運用管理も含めてアウトソースする決断を下しました。
「2011年以降、技術系のシステムを除くITシステム全般は総務部が管轄しています。ただ、総務部の人員はITの専門家ではなく、他にもさまざまな業務を兼務しています。その中で、社内システムの品質や安定稼働、継続性を担保するには、信頼の置けるIT企業にすべてを任せるのが理にかなっていますし、事実、JBCCのサポートには本当に助けられています」と、総務部総務課の小川 真宏氏は語ります。
パブリッククラウドよりも投資対効果が明確、検討のすえにハイパーコンバージドを採用
アウトソースの要請を受けたJBCCは、プリンス電機の情報系システムのサーバー群をブレードシステムによる仮想化基盤上に集約し、2011年から運用を続けてきました。この仮想化基盤は統合性に優れていましたが、稼働開始から5年を経過し、リソースの追加、老朽化対策、各アプリケーションのバージョンUPに対応せざる得なくなりました。。
「とりわけ問題だったのは、そのブレードシステムの生産が終了となり、トラブルが発生してもハードウェアの交換・追加ができなくなったことです。その意味でも、新しいインフラへの移行を急ぐ必要がありました」と、JBCC 広域事業部 横浜支店 グループリーダーの小宮大志氏は説明を加えます。
一方、プリンス電機では、この機を前向きにとらえていました。というのも、すでに基幹系システムやネットワークなどのインフラについては順次更改・刷新に着手しており、「それらと歩調を合わせて情報系のインフラも刷新してはどうか」との考えが浮上していたからです。
「情報系のインフラについても刷新が必要なことは認識していましたので、2016年時点でそのためのコストを試算し、投資額についての社内的なコンセンサスは取れていました。そんな中で、基幹系システムの更改に合わせて情報系のインフラについても新しくしようとの機運が高まり、刷新へと動いたのです。背後には、経済産業省の生産性向上設備投資促進税制の適用を活用し、すべてのITインフラを新しくするとの考えもありました」(北島氏)。
こうして2017年初めに情報系システムのインフラ刷新が正式に決定、その意向を受けてJBCCは新たな仮想化基盤を提案しました。それが、管理ソフトウェアの「Nutanix Xpress Edition」と、インテル® Xeon® プロセッサーを採用したレノボのサーバーを融合させたハイパーコンバージドインフラストラクチャ(以下、HCI)「Lenovo Converged HXシリーズ」です。HXシリーズを採用した理由について、小宮氏は次のように説明します。
「これまで運用してきたブレードシステムは、ストレージを一体化させたかなりコンパクトな設計でしたが、仮にこれを一般的なラックサーバーにリプレースし、仮想化基盤を構築した場合、外付けの共有ストレージを用いる必要があり、設置スペースが膨らんでしまう懸念がありました。これに対してHCIを用いれば、サーバーと内蔵ディスクを単一の共有仮想構造にプールすることができ、インフラの設置スペースがかなり小さく抑えられます。実際、HX2310-Eで構築された新インフラでは、従来のブレードシステムに比べても設置スペースが10%以上削減されています。しかもHX2310-Eの場合、最小3ノードからクラスタを構成することができ、お客様の予算感やシステム規模にもフィットすると考えました」(小宮氏)。
プリンス電機にとっても、この提案は十分に満足できる内容でした。
「インフラを刷新するに当たり、当初は、パブリッククラウドへの移行も検討しましたが、基幹系サーバーを物理サーバーでの運用と情報系のクラウド化の併用型は十分なコストメリットが得られる確証がなく断念しました。これに対して、HXシリーズを活用したJBCCの提案は、コスト的にも十分納得のゆくものでしたし、HXシリーズならばクラウドと同等の柔軟なインフラ運用が可能との説明を受け、採用を決めました」(北島氏)。
ノードの1つが故障した場合でも、データは失われることなく稼働を継続
2017年3月にJBCCのデータセンターに搬入されたHX2310-Eは、実質2ヶ月で仮想化基盤の構築を完了。その後、既存のブレードシステムからの段階的なアプリケーションとデータの移行を経て、同年7月から正式な運用がスタートしました。それから現在に至るまで、重大なシステムトラブルは一切起きておらず、その安定感について、小川氏は、「社内のコミュニケーションや情報共有を支えるインフラとして、しっかりと機能してくれています」と評価します。
さらに、HXシリーズへの移行により、データ保護の効率性が増し、インフラの可用性も高められていると、小宮氏は指摘します。
「導入したHX2310-Eは3ノード構成ですが、そのノード間ではデータが自動で分散・冗長化されます。そのため、仮にノードの1つが故障で停止したとしても、データが失われることはなく、システムもそのまま稼働を続けることが可能です。加えて、稼働しているサーバーのバックアップを別筐体のNASへ定期的に取得し、より確実なデータ保護を行っています」
現在、HX2310-E上では7~8台の仮想マシン(VM)が稼働し、会計、グループウェア、ファイルサーバー、ドメインサーバーなどが運用されています。各サーバーの動作パフォーマンスには問題はなく、「リソース的にもまだ余裕があります」と、小宮氏は指摘します。
さらに、Nutanixによるデータローカリティの機能がインフラのパフォーマンスを押し上げています。この機能は、インフラ上の各VMが、それぞれのデータが保持されているノード上で動くよう、VMの配置を最適化する仕組みです。その働きによって、ネットワークを介したトラフィック量が低減され、インフラ全体のパフォーマンスが高いレベルで維持されることになります。
「こうした機能に加えて、単一の管理コンソールから、仮想化基盤の運用管理に必要なすべての作業が行えるのもHCIであるHXシリーズの魅力です。当社では、レノボのサーバーについて豊富な運用実績があり、信頼も置いていることからHXシリーズを採用しましたが、その選択は正解だったと言い切れます」(小宮氏)。
プリンス電機では、JBCCの勧めにより、社内のPCについても、2011年から、ほぼすべてをレノボ製品で統一しています。その利用を通じて得られたレノボ製品への信頼も、HXシリーズ採用と無関係ではないようです。
「私たちは、IT製品の良否についてはよく分かりませんが、IT製品に何を求めるかは明確で、ときには厳しい要求を出す場合があります。JBCCはその要求に常に的確に応えてくれますが、そのためのすべとして、彼らがレノボのPCやサーバーを選択していることは、レノボ製品がそれだけ優れている証拠だと思います。当社とJBCCとはきわめて良好な関係を築いていますが、HXシリーズは、その信頼関係を今後も支えてくれると確信しています」