ものづくり革新のゴールを達成できるかどうかは、3D CADのデータをどれだけ有効に活用できるかどうかにかかっています。そのための環境が、信頼性の高いレノボ製サーバーを土台にした3D CAD on VDIによって整えられた意義は大きいと思いますし、このインフラの導入によって、3D CADの利用環境をどう用意するかで開発部門が頭を痛める必要がなくなった効果も大きいと感じています。
TOTO株式会社 衛陶開発第一部 国際陶器開発グループ
住中 宏 氏
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導入事例
開発現場の生産性向上とワークスタイル革新が一挙に加速
TOTOの3D CAD on VDIを支えるレノボインフラチーム
2017年5月で創立100周年を迎えるTOTO。同社は、陶器製造の圧倒的な技術力を土台としながら、研究開発や情報化に多額の資金を投じ、時代の変化・ニーズに適合した製品、あるいは、ウォシュレットのように、これまでにない革新的な製品を世に送り出し、着実な成長・発展を遂げてきました。開発の中では、製品の快適さ、機能性を高めるだけではなく、「いかに少ない水量で洗浄できる陶器を作るか」といった環境性能の向上にも力を注ぎ、それがTOTO製品の大きな付加価値を生んでいます。
そうしたTOTOが近年特に力を入れているのがグローバル展開の強化です。2017年度(2018年3月期)に向けて打ち出した経営計画「Vプラン2017」(2009年策定/2014年改訂)の中でも、「真のグローバル企業への転換」を大テーマとして掲げ、海外拠点の増強などを推し進めてきました。すでに同社の販売・生産拠点は欧米・中国・アジアを中心に17カ国に広がり(2017年4月時点)、海外での売上げも堅調な伸びを示し、TOTOファンをグローバルに拡大させています。
その海外事業にさらに弾みをつけるべく、推し進められているのが、デジタルテクノロジーを用いた「ものづくり革新」です。そのための中心的なツールとして、3D CADが位置づけられ、3D CADで作成した設計データを部門横断/グローバルで共有し、各国市場のニーズに合わせた製品開発・製造の生産性を高めていく取り組みが進められています。
3D CAD活用の重要性について、衛生陶器の開発を担当するTOTO 衛陶開発第一部 国際陶器開発グループの住中 宏氏は次のように説明します。
「海外の市場では、衛生陶器とウォシュレットを組み合わせた複合商品や、その商品を含むトイレ空間全体が市場に受け入れられます。ですから、衛生陶器やウォシュレットの開発部門、さらには空間デザインの担当部門が一体となって製品作りに取り組むことが大切で、それには、どのような種類の製品であれ、3D CADなどのデジタルツールを使ってものづくりのフロントローディング※を推し進めること、そして、設計データを部門横断で共有・活用していくことが不可欠となっているのです」
※製品開発の初期工程で、今まで後工程で行われていた作業を前倒して進めること。
この言葉を受けたかたちで、ウォシュレット開発第三部 商品開発第四グループの三山 一誠氏はこう続けます。
「トイレやトイレ空間のデザイン・機能に対する各国のニーズはさまざまです。そうした多様なニーズとその変化に即応していくには、企画・開発の段階から本社と現地が協働し、現地で製品開発から製造までが完結できるような体制も築いていかなければなりません。そのためには、日本の開発部門と海外の製造拠点が3D CADと設計データを共有し、協働できる仕組みを整えることが必要とされるのです」
このような考え方に沿ったかたちで、TOTOでは2010年頃から、各部門でバラバラだった3D CADアプリケーションの整理統合を推し進め、現在は、全社的に利用する3D CADがシーメンス社製「NX」と、ソリッドワークス社製「SolidWorks」の2種に絞り込まれ、衛生陶器・ウォシュレット・空間デザインの3部門についてはNXで一本化されています。ただ、3D CADを共通化しただけで、国内外の他部門・他拠点との設計データの共有化や協働のプロセスが効率化されるわけではなく、そのためのソリューションが必要とされます。そのソリューションとして、TOTOが選択したのが、仮想デスクトップ基盤(VDI)上に3D CADの利用環境とデータを集約し、一元管理するという「3D CAD on VDI」のソリューションです。3D CAD on VDI 環境はすでにTOTOのデータセンターに導入され、2017年3月から運用が開始されています。
TOTOの開発部門におけるVDIの採用は、3D CAD on VDIが初の試みではありません。同社ではCAEアプリケーションの利用環境をシトリックス・システムズの「Citrix XenServer」と「XenDesktop」、そしてレノボのサーバーから成るVDI環境に集約させ、2014年から本格的に運用しています。その意味で、3D CAD on VDIの導入は、CAE on VDIに連なるIT施策とも言えます。
この辺りの経緯について、TOTO 情報企画本部 情報企画部 商品開発IT支援グループの若林 貴伸氏はこう説明を加えます。
「TOTOにおけるIT化の基本方針は、サーバーやデータなどのリソースを可能な限りプライベートクラウド環境(データセンター)に集中化させ、ワールドワイドでのITインフラの共通化やリソースのガバナンス/BCP対策を強化していくというものです。CAE on VDIと、それに続く3D CAD on VDIは、こうしたIT化の方針と、開発現場の要望・ニーズが一致したことで導入に至ったものです」
こうしてTOTOに導入された3D CAD on VDI環境には、CAE on VDIとほぼ同じ技術・製品が採用されています。基盤ソフトウェアには、Citrix XenServerとXenDesktopが採用され、インフラを支えるサーバーにはレノボ製品が全面的に用いられています。より具体的には、仮想デスクトップ環境の管理サーバー群を支える仮想基盤サーバーとして、インテル® Xeon®プロセッサーE5-2600 v4製品ファミリーを搭載した2Uタイプの「System x3650 M5」が用いられ、3D CAD-VDI基盤サーバー群には、最大 2 基のインテル® Xeon® プロセッサー E5-2600 v4 製品ファミリーが搭載できる1Uタイプの「System x3550 M5」が利用されています。
TOTOでは、3D CAD on VDIの導入に当たり、採用するサーバー製品について一から比較検討を重ねました。その中で、レノボ製品を最終的に選択した理由の一つは、CAE on VDIの運用を通じてハードウェアの信頼性やGPUとの親和性の高さを確認していたからです。
「CAE on VDIの運用において、レノボのサーバーは大きな障害をまったく引き起こすことなく、期待した性能を発揮し続けてくれています。これはレノボ製品の採用を決めるうえで大きなプラス材料になりました」(若林氏)。
加えて、CAD on VDIに関するレノボの豊富な知見とサポート力も、製品採用の大きな要因になったと、若林氏は付け加えます。
「レノボには、3D CAD on VDI環境でのCPU/GPUの使い方から、CPU経由でのメモリの使い方まで、さまざまな設計上のアドバイス/支援をもらいました。このようにCADとVDIの双方に精通し、インフラの最適化が図れるシステムベンダーはレノボ以外に見当たらないと言っても過言ではありません。我々がレノボ製品を選んだ最大の理由もそこにあると言えます」(若林氏)。
TOTOでは3D CAD on VDIのシステムインテグレーター(SIer)として、CAE on VDIも担当した伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を採用しています。
「SIerについても、一から比較検討を行いましたが、我々がSIerに求めたのは、障害対応も含めて、3D CAD on VDIの保守・運用のすべてを安心して委ねられるサポート力です。CADとVDIに精通したCTCは、そうした能力を持つ数少ないSIerだったのです」(若林氏)。
こうしたSIerの選定基準からも察せられるとおり、TOTOには、ユーザー企業が自らITの技術に精通したり、インフラの保守・運用管理に煩わされたりする必要はなく、ITがもたらす恩恵だけを享受できればいいという合理的な考え方があります。こうした考え方から、3D CAD on VDIの導入に際しても、「有力なパブリッククラウドの利用を検討しました」と、若林氏は明かします。それでも、オンプレミス環境へのVDI導入を選択したのは、そうしたほうがシステムのトータルコストがはるかに安上がりで済むことが判明したからです。
「今回導入した3D CAD on VDI環境と同様のシステムをパブリッククラウド上で構築した場合、初期導入費を含めたトータルコストが、オンプレミスの何倍にも膨れ上がることが検討の結果わかりました。そのため、パブリッククラウドを使うという選択肢はありえないとの結論に達したのです」(若林氏)。
TOTOにおける3D CAD on VDIは現在(2017年4月時点)、運用初期のフェーズにあります。対象ユーザーは、衛生陶器・ウォシュレット・トイレ空間の各開発部門に限定されており、他の開発部門や国内外の製造拠点への展開については今後順次行われる予定です。
このように運用開始からまだ間もないものの、レノボ製サーバーを基盤にした3D CAD on VDIはさまざまな恩恵を開発現場にもたらしているようです。
「まず大きな効果と言えるのは、3D CAD用に特別なワークステーションを用意する必要がなくなり、社用の標準PCで3D CADが使えるようになったことです。これまで、3D CAD用ワークステーションの導入は開発部門が自ら行ってきましたが、機種の選定にも、調達にも、環境のセットアップにも多くの手間と時間がかかり、辟易していました。3D CAD on VDIの導入で、そうした本来業務とはかかわりのない仕事から解放されただけでも、かなりのメリットと見ています」と、住中氏は話します。
また三山氏は、開発現場の生産性やワークスタイルにも改善の兆しが見られると指摘します。
「ウォシュレットの開発部門では従来、3D CADで作業を行うには特定の場所にある共用のワークステーションを使う以外に方法はありませんでした。それが現在は、手持ちのPCを用い、(会社のネットワークに接続できる環境であれば)どこからでも3D CADがオンデマンドで利用できます。これにより、使いたいときに3D CADが使えないという現場の不満が一挙に解消されましたし、3D CADを用いたデザインレビュー会議や打ち合わせ、さらには社内教育も以前に比べ各段にやりやすくなりました。こうした変化は、開発の生産性にプラスの影響をもたらすものですし、在宅勤務やリモートワークなど、働き方改革にも自ずとつながっていくと考えています」
加えて、肝心の3D CADの動作性能にも問題は見られず、「むしろ、専用のワークステーションを使っていたころよりも、パフォーマンスが向上しています」と、三山氏は語り、こう続けます。
「以前は、ウォシュレット部門の3D CADデータは本社内のサーバーに置かれ、少し離れた開発拠点でそのデータを使って作業を行おうとすると、データの読み込みに数十分、保存にも数十分を要することが珍しくありませんでした。しかし現在は、数分レベルでデータの読み込み、保存が完了し、作業効率がグンと上がっています。このインフラならば、国内外の他拠点とのデータ共有や協働も問題なく行えるはずです」
言うまでもなく、開発現場の生産性向上やワークスタイル変革は、製品の競争力強化に直結する変化です。レノボ製サーバーを基盤とした3D CAD on VDIは、そうした変化を加速させながら、3D CADデータを起点にしたTOTOのものづくり革新をこれからも支え続けます。
ものづくり革新のゴールを達成できるかどうかは、3D CADのデータをどれだけ有効に活用できるかどうかにかかっています。そのための環境が、信頼性の高いレノボ製サーバーを土台にした3D CAD on VDIによって整えられた意義は大きいと思いますし、このインフラの導入によって、3D CADの利用環境をどう用意するかで開発部門が頭を痛める必要がなくなった効果も大きいと感じています。
TOTO株式会社 衛陶開発第一部 国際陶器開発グループ
住中 宏 氏
レノボ製サーバーを基盤にした3D CAD on VDIの導入によって、手持ちのPCで、いつでも、どこからでも3D CADアプリケーションがパフォーマンス良く利用できるようになり、開発現場の生産性やワークスタイルが大きく改善/改革される可能性が広がっています。また、インフラが安定稼働を続けてくれるおかげで、開発現場側は、アプリケーションの背後にある仕組みについてまったく意識せず、設計の業務に集中できています。
TOTO株式会社 ウォシュレット開発第三部 商品開発第四グループ
三山 一誠 氏
CADとVDIの双方に精通したシステムベンダーは、レノボだけと言っても過言ではありませんし、レノボ製品は信頼性も、コストパフォーマンスも非常に高い。その意味で、3D CAD on VDIを支えるサーバーとして、レノボ製品を採用したのは当然の帰結と言えますし、インフラの設計・保守・運用の手間や労力を可能な限り低減したい我々にとって、レノボは本当に心強いパートナーであると感じています。
TOTO株式会社 情報企画本部 情報企画部 商品開発IT支援グループ
若林 貴伸 氏