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すべての教師と教科で使える、学習場面別の効果的なパソコン・タブレットの活用事例

ICT活用が重視された新学習指導要領の実施に向けて、各教育機関や教育者が動き始めています。そこで前回は 、学校現場におけるパソコンやタブレットの導入目的や現状、課題などについて掘り下げました。今回は、文部科学省が平成26年4月に発表した「学びのイノベーション事業実証研究報告書 」と総務省が平成29年に発表した「教育ICTガイドブック Ver.1 」の内容をもとに、パソコンやタブレットが授業でどのように活用できるのかを紐解いていきましょう。

授業の質の向上をめざして、“とりあえず、やってみよう”からスタート

学校にパソコンやタブレットが導入されるといっても、「どのように使えばよいかわからない」と頭を抱える教師は多いでしょう。そのため、学校現場では“とりあえずやってみよう”と手探りでスタートしなければなりません。

パソコンやタブレットが導入されたら、まずは失敗を恐れないでどんどん使ってみましょう。学校現場では児童生徒に対して失敗があってはならないと、新しい挑戦に対して消極的な姿勢になってしまうこともありますが、“使いながら学ぶ”というスタンスで始めることが大切です。実際にICT先進校でも、教師同士が雑談ベースで話せるカジュアルな研修会を設けたり、互いの授業をオープンに見せ合ったりするなど、トライ&エラーが活発に行われています。

とはいえ、教師がICT活用でめざすのは、授業の質の向上です。ここでは、児童生徒の良い部分をさらに引き出すための効果的なICT活用について、学習場面ごとに取り上げてみましょう。

現在も多くの教育機関で参照されるICTを活用した授業づくりのポイント(文部科学省「学びのイノベーション事業実証研究報告書(概要)」3ページより抜粋)。
総務省が2017年に発表したICT先進校の事例集「教育ICTガイドブック Ver.1」においても、これらの活用を発展させた事例が多く見られた。

一斉学習におけるICT活用:デジタル教材や児童生徒のノートなど“見せる”ことから始めよう。

パソコンやタブレットの活用が分からない場合は、一斉学習の際に、電子黒板やプロジェクタを使ってデジタル教材や資料などを映写することから始めましょう。多くの教師にとって“見せる”ことを目的にしたICT活用は、これまでの授業スタイルを変える必要がなく取り掛かりやすいです。見せたい部分を拡大表示して「ここを見て!」と説明したり、動画や音声などのマルチメディア用いて、児童生徒の興味・関心を高めたりすることも可能です。

また、板書をスライドで映写したり、黒板に書いた板書を写真に撮って保存し、次の授業の際に前時の振り返りとして使ったりするのも効果的です。教師の中には、児童生徒が書いたノートを写真に撮って、その場で黒板に写す使い方も多いです。算数の答え合わせの際など、児童生徒が黒板に自分の答えを書き写すよりも、ノートを直接見せる方が早く、時間短縮につながります。

一方、教師だけでなく児童生徒にとっても、“見せる”ICT活用は有効です。特に前へ出て発表するときは、教師と同じように写真や資料を使って分かりやすく伝えることができます。「堂々と発表できるようになった」「明確に説明できるようになった」「発表する意欲が高まった」など、手応えを話す教師もいます。

協働学習におけるICT活用:コミュニケーションを活性化するグループ学習を実現

一斉学習でパソコンやタブレットを使えるようになったら、今度は協働学習に挑戦してみましょう。3~4人のグループに1台もしくは1人1台など、グループ学習にICTが加わると、児童生徒の試行錯誤が活発になり、コミュニケーションが増えます。

協働学習で事例が多いのは、写真や動画などカメラを使うICT活用です。植物の成長過程を写真で撮影してレポートにまとめたり、体育の器械運動では、自身の動きを動画に撮影して、グループで改善点を話し合ったりなど、これまでの学習を広げてくれます。ほかにも、プレゼンテーションやスピーチの練習、音楽の合唱練習や楽器の練習などにも動画撮影が使われています。

また協働学習では、タブレットやコンピュータを使った調べ学習や探求学習も多いです。与えられたテーマや課題について、グループでネット上のデータや情報を調べ、その内容をプレゼンテーションやデジタル新聞などにアウトプットする活動が増えています。デジタルであれば、情報の収集、編集、加工、発信が手軽に行えるため、グループによるトライ&エラーが活発に行われ、コミュニュケーションが活性化するメリットがあります。

さらには、同様の活動をクラウド上で行うと(もしくは教育用クラウドプラットフォームを使うと)、リアルタイムで意見共有や同時編集作業も行えるようになります。一例として、グループでクラウド上にノートを共有し、それぞれのタブレットやコンピュータから同時で書き込んで、ひとつのデジタル新聞を作成するといった事例があります。このような活動は紙でも可能ですが、ICTやクラウドを使うことで、より多様な形で行えることがメリットです。

個別学習におけるICT活用:一人ひとりのアウトプットを活発にし、多様な授業スタイルへ発展

グループで1台のパソコンやタブレットが活用できるようになったら、いよいよ1人1台環境で個別学習に取り組みましょう。

1人1台の場合は、授業支援ツールを活用して児童生徒の画面を黒板に映写するところから始めましょう。クラス全員の意見を一覧表示して、意見を共有したり、異なる意見を比較したりすることができます。児童生徒の授業への参加感も高まるほか、普段は手を挙げない児童生徒の意見も拾えるようになります。

また黒板に映写しなくとも、教師のパソコンやタブレットに一覧表示させることで、児童生徒の答えをリアルタイムで把握することが可能です。これにより、どの部分でつまずいたのかも分かります。ほかにも、個別学習として調べ学習や探求学習に取り組むのも良いです。1人1台で使えると、タブレットやコンピュータに触る時間が圧倒的に増えるので試行錯誤が活発になります。

最近では、デジタルのドリル学習を使用する学校も増えています。ドリル学習では、児童生徒の答えを瞬時で正誤判定し、学習記録を蓄積したり、製品によっては、個々の習熟度に合わせた問題を提示したりするアダプティブ・ラーニングのサービスもあります。いずれにしても、一人1台の場合は、自分のペースで学習できる環境を築くことが大切だといえます。

学校外のICT活用:離れた場所との“つながり”がもたらす、新しい学びのかたち

教育用コンピュータの利用は、なにも学校内だけに限った話ではありません。学校の外に持ち出したり、他の学校や有識者とつながったりすることで、多様な学習の場を創ることができます。

課外活動で多いのは、デジタルカメラとしてタブレットを活用する方法です。例えば、校外学習や社会科見学のときに、見学した場所やインタビューの様子を写真や動画で記録しておくと便利です。教室に戻ってから撮影した写真を使ってレポートにまとめたり、動画をもう一度観たりすることができます。当日に欠席した児童生徒にも内容を共有することが可能です。

中学校では、職業体験や修学旅行にタブレットを持参する学校もあります。中学生になると写真や動画で記録を撮ることはもちろん、職業体験先や修学旅行先から職員室の教師に報告を行うなど、離れた場所にいる教師との連絡に用いることもあります。

一方で、地方では遠隔授業に活用する事例も多いです。過疎地域や山間部では、都市部の学校とオンライン通話でつながり、互いの様子をカメラで写しながら交流学習が行われています。また、同じ方法を用いて、大学や有識者とつながり、専門的な話を聞く遠隔授業もあります。ほかにも、パソコンやタブレットを家庭に持ち帰って、予習の動画を観たり、宿題の配布や提出をクラウド上で行う取り組みなども広がっています。

以上のように、パソコンやタブレットはさまざまな学習場面で活用することができ、教師の指導スタイルや、児童生徒の学びを広げてくれるツールです。しかし、いざ授業で使うとなれば、これまでになかったトラブルが生じるためリスクに感じる教育者もいるでしょう。最初からノーリスクをめざすと、ICTのメリットは引き出せません。現場では、教師が失敗を恐れず、“使いながら学ぶ”という気持ちで、長期的な活用をめざしていきましょう。

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