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特集

ThinkStation完全検証

「4K」という言葉はもはや一般的に使われるようになり、いわゆるフルHDよりも高解像度であることも一般に周知されてきている。前回、Blackmagicのカメラやカールツァイスのレンズといった最新の4K対応プロ用機材で撮影した素材を今回は編集してみた。4Kの高精細動画ともなればデータは非常に大きく、RAW形式のデータの処理にも高い性能が必要。今回は編集編・前編として、引き続き電報児の田村氏にお話をうかがいながらまとめた。

DaVinci Resolveで編集を開始

DaVinci ResolveとThinkStation P700で編集作業中の電報児の田村氏

今回の編集は主にBlackmagicのDaVinci Resolveを使って行った。DaVinci Resolveを簡単に紹介しておくと、カラーグレーディングをメインとしたプロ仕様のノンリニアビデオ編集が融合したソフトウェアで、エデット、カラーグレーディング、デリバリーがDaVinci Resolveで完結するという。
DaVinci Resolveは、田村氏が「カラーグレーディングに強いソフトと痛感した」と語るように、プライマリー、セカンダリーのカラーグレーディングを用いてルックアップテーブル(LUT)を使って色を自在に決めていくという機能が充実している。色をノード形式といわれるツリー状に図示し、一個一個の個別のノードに分けて色を補正していくことができる。例えば肌の部分をだけを抽出、そこだけ色を鮮やかに変更し、再び元の映像と合成して出力するということができる。
そして、DaVinci Resolveではそれらを組み合わせて複雑な編集作業も可能で、設定次第では自動で肌の部分を抽出して補正し、また別に抽出された部分も補正、最後に組み合わせて最終的な納品データまで生成することも可能だ。
また、独特な機能として、カラーパネル機能がある。これは、カラーチャート(マクベスチャート)を本番環境で撮影しておけば、そのチャートに合わせてカラーを自動補正することができる。うまく使えば正しい色の再現が非常に簡単になる。
そして、細かいバージョンアップが盛んに行われている点もDaVinci Resolveの特徴。頻繁に行われることで、不具合が見つかった場合の早期解消や機能の改善、思い切った新機能の盛り込みなども期待される。

  • ノード形式で動画修正の手順を図示、複数抽出して重ねあわせ、再びカラー処理をするなど複雑なことも可能

  • カラーチャートを写した映像をもとに色調を補正する「カラーパネル機能」

Blackmagic Davinci Resolve

カラー補正に特化したDaVinci Resolve

カラー補正も含めた編集ソフトとしては、アドビのAdobe Premiere Pro CCがあり、よく比較される。Davinci Resolveと比べた場合に、DaVinci Resolveが優れている点としては前述のとおりカラーの扱いが挙げられる。
LUTを使ったカラーグレーディングは編集ソフトの世界では流行の機能だが、DaVinci Resolveはノード形式のカラーグレーディングをメインに置くことで機能面でも一日の長がある。前述のとおりノード形式でわかりやすく指定、それを細かく設定できる。簡単な色補正はもちろん、設定次第では別々に補正したレイヤーを複数作り、レイヤーミキサーで重なり合わせ、最後にLUTで仕上げるという複雑なことも可能となっている。
もちろん、Premiere Proの機能が劣っているわけではない。長尺になった場合のカット編集や、様々なメディアの読み込みの対応、Adobeアプリケーション間での連携などPremiere Proの得意な分野がある。どちらが優れているのではなく、DaVinci Resolveはカラーの編集機能を重視するという方向性の違いと言ったほうがよいだろう。

DaVinci Resolveで編集を開始

EIZOの4Kモニター「ColorEdge CG248-4K」。キャリブレーションセンサーが画面中央上部に付いている

一方、編集には高品質なモニターも必要だと田村氏は言う。今までは8ビットの階調表現のモニターを用い、カット編集してつなげた程度でも許されることもあったが、4K表示対応の液晶モニターにも高品位なものが登場したことで、10ビット階調のモニターでいい色を出し、しっかりとした作品を納品していく必要がでてくる。と予想している。
今回、編集に使ったモニターは、EIZOの「ColorEdge CG247」。さらに4K出力確認用として最新4Kモニター「ColorEdge CG248-4K」も併用した。CG248-4Kは23.8型で3840×2160ピクセル表示、Adobe RGBカバー率は99%。モニターの上部にはキャリブレーションセンサーを内蔵、自ら正しい色の調整が可能で、カラー補正を行うモニターとして必要な機能が揃っている高性能モニターだ。
これならば、カラー補正をした場合でも正確にその補正具合を確認できる。田村氏によれば、最近では当たり前となりつつあるカラー補正による表現にも十分対応できると評価した。

  • EIZO ColorEdge CG248-4K

    EIZO

    ColorEdge史上最高の高密度、185ppiを実現した23.8型4Kモニター。かつてない濃密な表現力が、クリエイターの一つ上の作品づくりを支えます。
    フルHDの4倍にあたる3840×2160/4KウルトラHDの解像度は、4K映像や4K放送の制作・リファレンス作業にもワークフローを横断して活用できます。

    EIZO株式会社
    〒924-8566 石川県白山市下柏野町153番地

    URL: http://www.eizo.co.jp/

モーショントラッキングとスタビライズも実施

今回の映像ではDaVinci Resolveによる編集のほか、一旦ProResに変換してAdobe After Effects CCによって、モーショントラッキングによって映像のスタビライズ処理を行っている。手ブレ補正みたいなものと言えばわかりやすいが、何らかの振動などによるカメラのフレームのズレも修正している。4K映像というと非常に微細な映像なため、凝視すれば細かいところまで目立ってしまうからだ。
この処理も決して軽い処理ではないが、パワーに余裕のあるワークステーションであれば、スムースに処理が進むとしている。

超高速ストレージで撮影データを転送

編集に際しては、まず、撮影したデータを本体に取り込むために、ストレージの接続は不可欠だ。そこで、撮影編でも用いたThunderboltをインターフェースに採用し、転送速度は最大10Gbps(規格値)というアイ・オー・データ機器のHDUS-TBSSSシリーズのような大容量の超高速ポータブルストレージは欠かせない。
持ち帰ったデータをノートPCから移動する場合でも高速ストレージは便利。ネットワーク経由でNASを使う方法など、別の手段もあるが、Thunderboltに接続してさっと使える便利さは必要だ。

  • アイ・オー・データ機器のHDUS-TBSSSシリーズ。Thunderbolt対応のポータブルストレージ

  • Thunderboltポートを装備することも可能

ThinkStation P700で今までにない再生環境を手に入れる

DaVinci Resolveでのカラー補正をはじめとする今回の編集作業を担うマシンはThinkStation P700。CPUにはインテル® Xeon®プロセッサー Xeon E5-2650 v3 (2.30GHz/10コア) を2基搭載し、合計で20コア 40スレッドの処理が可能。グラフィックボードはハイエンドグラフィックスのNVIDIA Quadro K5200を搭載している。DDR4メモリーを64GB搭載するほか、ストレージはOS起動に使うSSDの他に超高速なデータ転送が可能なFLEX M.2 SSDをアプリケーション用に使用することでストレージでのボトルネックを解消している。

  • ThinkStation P700

    使用モデルのスペック
    • Xeon E5-2650 v3(2.30GHz/10コア)×2 計40スレッド

    • 64GB (8GB×8)2133MHz DDRメモリー

    • 512GB SATA SSD(OS起動)
      256GB FLEX M.2 SSD ×2 (アプリケーション)
      1TB SATA SSD(データバックアップ)

    • NVIDIA Quadro K5200グラフィックス

    • Thunderbolt PCI I/F

    • Microsoft Windows 7 Pro 64bit

  • 2つのCPUが直列に2個並ぶ、独自のヒートシンクとエアーバッフルにより、熱の排出性能は更に高まっている

  • M.2 SSDはFLEXアダプターに2基搭載可能、専用のスロットを使用するため、PCIやストレージ用のスペースを占有しない

  • FLEX M.2 SSDはSSD×2台でのストライピング(RAID 0)構成よりも読み込みで上回る。PCI接続の超高速ストレージFusion-io ioFXに肉薄する性能。

  • Blackmagic Disk Speed Testによる速度確認、FLEX M.2 SSDは全ての項目でグリーンとなっている

P700はコンパクトなシャシーながら、余裕のある850Wの電源を備えており、2つのCPUの他、電源容量の大きいハイエンドグラフィックスボードの搭載にも対応する。独自のエアーバッフルによりエアフローを最適化しており、排熱に加えて静音性も達成している。
ワークステーションは搭載CPUの種類やメモリー、ストレージといった本体のスペックもさることながら長時間駆動の信頼性も重要。その点にも十分考慮すれば、ThinkStation P700はまさに4K動画編集マシン。安定して映像編集作業を行うことができる。

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【ThinkStation完全検証】Quadro K5200とDaVinci Resolveで4K動画編集に挑む 前編(583KB)

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